鑑賞眼

VR演劇「僕はまだ死んでない」 演劇とは何かに挑んだ意欲作

 目線と一緒に視界が変わるのは、純粋に楽しい。直人の目線になり4人の顔を見たり、天井を見上げたり。天井といってもそこには舞台用の照明があり、自分が舞台にいる感覚だ。客席がステージの真ん中にある、逆円形劇場に近い。役者の目線になることは通常の観劇では不可能だけに、ここにも「演劇とは」という疑問が生まれる。これは3Dの飛び出すエンタメというより、没入する体験型エンタメという印象だ。

 専用メガネを使わず2D映像でも楽しめるが、ヘッドホンとゴーグルを使うと、「今これを見なければならない」感は強まる。演劇の魅力のひとつは「ここからもう逃げられない」(物理的に劇場を出るほかない)感覚を味わうことかもしれず、そういう意味で本作は演劇だ。

 とはいえ、あらゆるもののボーダーがなくなる時代に、「演劇」か「映像」かとジャンルにこだわること自体がナンセンスだろう。結論としては、VR演劇は新しいエンタメのジャンルと考えるのが一番しっくり来る。採算が取れるなら、今後も多彩な才能による新作を見てみたい。

 配信チケット購入は31日まで。問い合わせは、CATチケットBOX(電)03・5485・5999。(道丸摩耶)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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