3・11を想う

英紙タイムズ東京支局長 リチャード・ロイド・パリーさん 「仕方がない」と我慢してはだめ 

 --大川小の悲劇では、石巻市や宮城県を相手どり、一部の遺族が訴えを起こした

 「大川小の件は、教育委員会や一部の教師に瑕疵(かし)があったのは当初から明らかだったが、訴訟は最高裁まで続いた。遺族はわが子を失い、十分苦しんだのに、苦しみが長引いた」

 「多くの日本人は行政の誤りを『天災』として受容すると言ったが、訴訟に参加した遺族は違った。行政の説明をうのみにせず、納得できる説明が得られなければ問い続け、提訴に踏み切った。そして遺族側が勝訴した。こういう人が日本にもっと増えれば、日本はよくなると思う」

 --震災後、「絆」がキーワードになったが、実際には分断も見られた。著書で取り上げた大川小の遺族で、一度は娘を失った者同士、親しくなった母親たちが、徐々に断絶する様子を描いた

 「家族の死や大災害などの悲劇に直面するのはつらい。英国に『雲の後ろに銀色の裏地がある』(悪いことの裏にはよいことがある)ということわざがある。つらさと向き合うために、私たちは悲劇の裏に『銀色の裏地』を求める傾向がある。それが絆ではないか。つらいときに絆が生まれることがあるのは事実だが、分断が生まれることもまた事実。こうしたことを理解しないと、被災者の痛みを真に知ることはできないだろう」

(聞き手 橘川玲奈)

【プロフィル】リチャード・ロイド・パリー

 1969年生まれ。英オックスフォード大卒業。1995年、英紙インディペンデントの特派員として来日。2002年に英紙タイムズに移り、アジア編集長・東京支局長を務め、日本や朝鮮半島など東アジアを担当。邦訳された著書に「黒い迷宮」がある。「津波の霊たち」は2018年、英国の文学賞フォリオ賞を受賞した。