お金をかけずにより良い介護へ-。こんなキャッチフレーズを掲げ、介護現場でのICT(情報通信技術)普及に取り組むNPO法人がある。その名も「タダカヨ」(東京)。家族との面会や落語会などの娯楽をオンラインで提供し、介護現場における人手不足やサービスの質向上につなげる。新型コロナウイルス下でのニーズとも合致し、同種のサービスは広がりそうだ。(矢田幸己)
マニュアルを無料公開
「(家族と面会できず)2週間も声を発していなかった入居者がパソコンの画面を通じてお孫さんと面会し、涙を流していました」
介護現場で働いている相談員から、タダカヨ代表の佐藤拡史(ひろし)さん(40)のもとに届いた感謝のメッセージだ。
タダカヨではNPO設立前の昨年3月ごろ、介護従事者や施設入居者の家族らを対象に、オンライン面会に関する簡易マニュアルの無料公開を始めた。現在は、オンライン会議サービス「Zoom(ズーム)」やビジネス用チャットアプリ「LINE WORKS(ラインワークス)」などのマニュアルを中心に公開している。
実際の操作画面の画像に、分かりやすい説明文を付けたPDFファイルが好評で、総ダウンロード数は1万件を超えたという。
脱サラし、活動に注力
タダカヨは昨年12月に発足。佐藤さんは大人用紙おむつなど衛生用品を扱う大手メーカーで15年以上、販売やデジタルマーケティングに従事していたが、仕事を通じ、コロナ下の介護現場では家族の面会すらままならない実情を把握。「これまでの経験を生かせば、介護業務の効率化や入居者の生活の質向上に貢献できるのでは」と考え、退職してNPO法人の活動に注力することにした。