歌舞伎俳優で、ドラマ、ミュージカルと幅広く活躍する尾上松也(おのえ・まつや)(36)が、映画で初の主演を務めた。12日から全国で公開される「すくってごらん」で、英語歌詞のラップまで披露する。異色作だが、「スタッフの皆さんの挑戦姿勢に共感した」と出演の理由を語る。松也に話を聞いた。(石井健)
一か八か
大谷紀子の漫画「すくってごらん」が原作。左遷された東京のエリート銀行マン、香芝誠(かしば・まこと)が、転勤先で出合った金魚すくいを通じて成長する姿を描く。
映画のほうは、監督の真壁幸紀(ゆきのり)(36)が、独特のテンポをもった一風変わったミュージカル仕立てのラブコメディーに仕立てた。
人気アイドルグループ、ももいろクローバーZのメンバーで、映画では赤い浴衣姿が金魚のようにかれんな百田夏菜子(ももた・かなこ)(26)、ミュージカル俳優、柿澤勇人(はやと)(33)が共演。柿澤は歌い踊り、百田もピアノ演奏に挑戦した。そして、松也もラップを披露する。
「監督が原作を読んで、音楽を取り入れたら面白いのではないかと考えたそうです。脚本を読んで、いったい、これをどう形にするのか興味をもちました。一か八かチャレンジしようとしているスタッフの皆さんの、心意気みたいなものにすごく共感したんです」
そこで松也は、記念すべき初主演映画に、この作品を選んだ。
「自分もどちらかというと、そういうことをしてきました。だから、そういう精神を持ちながらやっている人たちが好きなんですね」
小赤
松也は5歳で二代目尾上松也を名乗り初舞台を踏んだが、代々続く歌舞伎の家ではなかった。梨園(りえん)に入ったのは、父の六代目尾上松助が、二代目尾上松緑(おのえ・しょうろく)の一門に入門してからだ。
「うちは歌舞伎の家柄ではない。だから自分に何か付加価値がないと、役はつかない。歌舞伎以外のところで、さまざまな仕事をして『役者としての価値』を上げないと、歌舞伎の世界で残っていけないと考えました」