主張

震災とスポーツ 日常取り戻す力を今こそ

 女子プロゴルフは観客を入れてのトーナメントを開始した。Jリーグも開幕し、プロ野球はオープン戦の最中だ。

 10年前を思いだす。東日本大震災による電力不足などから多くのイベントが中止、延期となる中でスポーツは日常を取り戻す一助を担った。新型コロナ禍の今も、スポーツには同様の役目を望みたい。

 震災10年を振り返る。選手らは被災地への思いを胸に戦った。

 震災の影響で開催地を東京からモスクワに移したフィギュアスケートの世界選手権では、安藤美姫が鬼気迫る演技で優勝した。サッカーの女子W杯ドイツ大会では、日本代表「なでしこ」が被災地のビデオに涙しながら制覇した。いずれも震災の年の快挙だ。

 仙台で被災し避難所生活を経験した羽生結弦はソチ、平昌の冬季五輪フィギュアを連覇した。「見せましょう、野球の底力を」と約束した東北楽天は約3年の歳月を要したが、日本一となった。

 岩手県釜石市で津波に妹と家を流され、声を失った女性は地元のラグビークラブ、釜石シーウェイブスの応援で初めて大きな声を出せた。そしてこう話した。「ラグビーっていいよね。皆で前に進むんだもの」。スポーツは時にこうした奇跡も起こすことがある。

 6日には釜石鵜住居復興スタジアムでラグビー・トップリーグの東芝-三菱重工相模原戦が行われた。最寄りの鵜住居駅近くには、震災の追悼施設「釜石祈りのパーク」があり、犠牲者全員の名とともに「市民総意の誓い」として教訓が刻まれている。

 「備える」 災害はときと場所を選ばない 避難訓練が命を守る

 「逃げる」 何度でもひとりでも 安全な場所にいちはやく その勇気はほかの命も救う

 「戻らない」 一度逃げたら戻らない戻らせない その決断が命をつなぐ

 「語り継ぐ」 子どもたちに 自然と共に在るすべての人に 災害から学んだ生き抜く知恵を語り継ぐ

 誰もが胸に銘記すべき箴言(しんげん)である。一昨年にはラグビーW杯の会場となり、フィジーやウルグアイの応援に来日した両国の関係者やファンも、ここを訪れた。釜石での試合数が増せば、施設の来訪者も増える。スポーツと復興、防災教育との共存のあり方を、さらに前へ進めてほしい。