語り部の10年 東日本大震災

沈黙する校舎で命と向き合う 佐藤敏郎さん(57)

「先生がいなければ、子供たちは助かったかもしれない」

遺族から悲痛な声も上がった。

逃げたくても、教師の指示で校庭にとどまった子供たちの不安や恐怖。そして、子供の命を守れず、ともに亡くなった10人の教師たちの無念。

震災直後は未来のことを考えたくもなかった。勤務していた中学がある女川町でも、人口の1割近くが犠牲になった。それでも、教え子たちは震災にまっすぐ向き合っていた。背中を押されるように、平成27年に中学を退職し、語り部活動や全国での講演で、子供たちの命を守るための防災を呼び掛けてきた。

大川小は、一人一人がそれぞれの立場で思いを寄せる場所だと考える。かけがえのない命と向き合うこと。それこそが、未来を生きる力になる。津波を受けても残った大川小の野外ステージ。書かれている校歌のタイトルは「未来を拓(ひら)く」だ。

「遺族として、簡単に教訓と言ってほしくないという思いもあった。しかし、同じような失敗や後悔は繰り返してほしくない」

(本江希望)

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