正論4月号

チャイナ監視台 南米とアジアで外交二連勝 産経新聞台北支局長 矢板明夫

2011年8月の訪中時、歓迎式典に臨むバイデン米副大統領(当時、左)と中国の習近平国家副主席(当時)=北京(共同)
2011年8月の訪中時、歓迎式典に臨むバイデン米副大統領(当時、左)と中国の習近平国家副主席(当時)=北京(共同)

 ※この記事は、月刊「正論4月号」から転載しました。ご購入はこちらをクリック

 バイデン米大統領が習近平氏と電話会談したのは、バイデン氏の大統領就任から三週間が過ぎた二月十一日のことでした。日本をはじめとする同盟国やロシアなどとの会談はとっくに済んでおり、なぜ米中首脳電話会談がなかなか実現しないのか、もしかしてバイデン氏が電話をし忘れているのではないかと世界的に注目されたほどです。

 この米中のトップ会談でバイデン氏が優勢だったか、あるいは習氏がうまく立ち回ったのか、外交ウォッチャーの間でも評価が分かれるところですが、私は習氏のほうに軍配が上がったのではないかとみています。習氏はバイデン氏を自分の側に取り込みつつあると、少し自信を持ち始めているようです。もちろん、アメリカ政府や議会には対中強硬派の勢力が強いですし、米国世論も中国には厳しい。さらに国際社会の目もあるので、バイデン氏も中国にあまり接近しすぎるわけにはいきません。今回の会談で、バイデン氏は中国に対して口では厳しいことを言いました。まだバイデン氏の中国に対する態度には迷いが見えるというのが現状です。

 今回の電話会談で、バイデン氏は習氏のことを「国家主席」とも呼んでいました。トランプ前大統領は任期後半には常に「総書記」と、共産党の肩書でしか呼びませんでした。つまりトランプ氏とポンペオ前国務長官は中国共産党と中国人民を分けて、「中国の人民は悪くない。悪いのは共産党だ」との姿勢に徹していたのです。それをバイデン氏はなし崩しにしてしまったわけで、習氏はさぞホッと一息ついたことでしょう。

 バイデン氏はまた電話会談で、「米国と中国とは競争関係にある」とも発言しました。競争関係とは必ずしも敵対関係ではなく、友達の間でも成り立つ関係です。この発言にも中国側は一安心したのではないかと思います。