茨城・土浦のイラストレーター、震災きっかけにアナログ生活 手書き新聞で「岡本太郎現代芸術賞」入選 

茨城・土浦のイラストレーター、震災きっかけにアナログ生活 手書き新聞で「岡本太郎現代芸術賞」入選 
茨城・土浦のイラストレーター、震災きっかけにアナログ生活 手書き新聞で「岡本太郎現代芸術賞」入選 
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 間もなく発生から10年を迎える東日本大震災をきっかけにアナログ生活を始めた茨城県土浦市在住のイラストレーター、「かえるかわる子」こと矢口祥(あき)子さん(48)は、地元の魅力を発信するべく手書きの「矢口新聞」を発行し続けている。今年で7年目を迎え、発行数は今月1日で232号に及ぶ。昨年11月には「第24回岡本太郎現代芸術賞」に入選するなど、その作品がじわじわと注目を集めている。(谷島英里子)

派手な新聞

 新聞は、A4白紙にボールペンと色鉛筆で、土浦市の魅力やイベント、アナログ生活の日常などのイラストを描いては、短いコメントも添えて編集する。

 作家名は「かえるかわる子」。「がまの油」で有名な筑波山(同県つくば市)や、「自分が変われば周りも変わる」といった意味も込めて名付けた。新聞にはキャラクターとして、名産のレンコンと趣味で集めているこけしを合わせた造語「土浦れんこんけし」というキャラクターとともに登場する。コメントに突っ込みやギャグを入れるなど、楽しく、面白くテンポよく読めるよう工夫している。

 一目で派手な新聞だ。新聞の縁はスパンコールや布などをコラージュする。矢口さんは「私を知らない人が見ると、『小学生が書いたようだ』と言われます。勢いで書くので、うまい下手は考えていませんね」と笑う。

携帯なし、パソコンなし、テレビなし…

 江戸時代から続く土浦市の酒店に生まれた。県内の会社に勤めていたとき、東日本大震災が発生した。当時は携帯、パソコン、テレビを持ち、家では「インターネット中毒状態だった」という。

 土浦市も震度6弱を記録し、矢口さんは停電や断水に見舞われ、実家の酒店は解体せざるを得ない状態になった。ライフラインが復旧し、すぐさま動画サイト「ユーチューブ」を開いたが、東北の津波や人的・物的被害を目にして絶望した。

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