主張

緊急事態宣言 延長期間で何を変えるか

 菅義偉首相は4日の国会で、首都圏の1都3県に発令中の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言について、「国民の命と暮らしを守るため、2週間程度の延長が必要と考えている」と述べた。

 首都圏では新規感染者数の減少スピードの鈍化が目立つ。東京などでは前の週の同じ曜日よりも感染者数が増えた日も出ている。最近の東京の新規感染者数は、急激な感染拡大に見舞われる直前の昨年11月頃の水準だ。病床の逼迫(ひっぱく)も解消されたとはいえない。延長の判断は妥当だろう。

 ただし、期間を延ばしても今までと同じ対策を漫然と続けるなら改善は見込めない。どのような対策を講ずるのか、期間終了時にどのような指標を満たせば解除するのか。菅首相は記者会見でこの点を明確に説明してほしい。

 緊急事態宣言を先行解除された関西圏の大阪市や京都市では人出が大幅に増加している。首都圏でも同様に解除すれば、人出が増して感染拡大につながることが懸念される。

 政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は宣言期間の延長を「正しい選択」と述べた。確かにこの状況で解除を強行するよりは正しかろう。

 だが、宣言中であるにもかかわらず、首都圏の主要駅周辺ではすでに人出が増加傾向にある。新規感染者数の下げ止まりはこうした「緩み」に起因するとみるべきだ。現行の宣言は期待したほどの成果をあげなかったことを政府や1都3県は反省し、延長期間中の対策の中身と解除の条件、解除後の姿を具体的に示してほしい。

 新たな対策の効果が新規感染者数などに反映されるには約2週間を要するとされる。それでは2週間後の解除の是非を判断する指数にはなりにくい。病床数を拡充して使用率を改善するといった、目に見える目標が必要である。

 感染力の強い新型コロナの変異株への備えはますます重要になっている。国や自治体は検査態勢や濃厚接触者の範囲を広げるなど対策を強化するときだ。

 時短営業を続ける飲食店は厳しい経営状況にあるが、延長する2週間は経済を取り戻すための期間でもある。菅首相は「大変重要な局面にある」とも語った。その認識に見合うだけの対策と実行力をみせてもらいたい。

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