新型コロナや入試改革…翻弄された高校3年生らが卒業

新型コロナや入試改革…翻弄された高校3年生らが卒業
新型コロナや入試改革…翻弄された高校3年生らが卒業
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 新型コロナウイルスの感染拡大で、進路の選択にもさまざまな影響を受けた高校3年生が卒業シーズンを迎えた。コロナの収束はまだ見通せず、卒業後の新生活にも、コロナの影はつきまとうことになる。大阪府立成城高校(大阪市城東区)では5日、3年生(196人)の卒業式が行われ、校長が「夢に向かってくじけず、一歩一歩進めば道は開ける」とエールを送った。

 マスク姿の卒業生らは、感染防止対策として間隔をあけて着席。下級生は出席せず、保護者の参加も原則1人に制限された。国歌や校歌斉唱はなく、収録された歌を静聴。卒業証書の手渡しも各クラスの代表者1人にし、式典の時間を大幅に短縮した。

 浅川又一校長は式辞で、コロナの影響で学校行事が中止となったことなどに触れ、「皆さんはよく理解し、我慢してくれた」とし、「一生懸命な人、誠実な人には理解者が現れ、思いや願いはかなう」と激励した。卒業生代表の岸本美咲さん(18)は「悔いのない人生を送るため、今、私たちができることを懸命に取り組むことを誓う」と力強く話した。

「入試改革元年」生として

 卒業シーズンを迎えた高校3年生は、新型コロナウイルスの感染拡大前から翻弄された学年だった。

 大学入試改革元年の受験生として、大学入試センター試験の後継である大学入学共通テストに向け、高校入学時から対策をスタート。だが、改革の目玉とされた英語民間検定試験や記述式問題の導入は2年生の冬になって延期が決まり、「せっかく対策してきたのに」との嘆き節も聞かれた。

 2年生の3学期が始まる年明けには、コロナの感染拡大という想定外の事態に。3月にはほとんどの高校が休校になり、部活の多くは休止。夏の全国高校野球選手権大会、全国高校総体も史上初の中止となった。

 不要不急の外出自粛やマスク着用といった新しい生活様式が定着する中、大学入学共通テストは首都圏や関西圏での緊急事態宣言下で行われた。河合塾大阪校の山田浩靖校舎長(60)は「長期休校の影響で学力が伸び悩むかと思ったが、共通テストの平均点は高く、そうでもなかった。努力の結果だろう」と話す。

 就職を目指した生徒も、コロナ禍に翻弄された。近年、高校生への求人は増加し続けていたが、コロナの影響で減少。大阪府内の昨年12月時点での求人数は約2万6千人と、前年同時期に比べ約3割減少した。大阪労働局の担当者は「採用を中止した企業もあり、就職先の選択肢が狭まった」と話す。

 採用選考の解禁日は臨時休校の影響で、1カ月遅れの10月16日に。オンライン面接など、新しい方式への対応も必要になった。ある高校の進路指導の担当教諭は「例年は年内にほとんどの生徒の就職先が決まっていたが、今年度はそうはいかなかった」と振り返り、生徒らの苦労を思いやった。

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