中国が2021年の国内総生産(GDP)成長率の目標を「6・0%以上」と設定したことは、日本経済に追い風になりそうだ。新型コロナウイルスの感染拡大から、いち早く経済活動を再開させた中国向け輸出のさらなる増加が見込まれるためだ。ただ、米国はバイデン政権に代わっても対中強硬路線を緩めない考えで、中国製の半導体を使わないなどサプライチェーン(供給網)から中国を外す動きを加速させれば、対中輸出が増す日本経済にも影響は避けられない。
「中国の21年の成長率は市場予測では8%程度が多い中、6%は保守的な数字ではないか」。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストはこう分析する。実際、20年10~12月期の中国のGDPは前年同期比で6・5%増と、すでに6%を上回っている。
中国の高成長が続けば、輸出を中心に日本への恩恵は大きい。1月の中国向け輸出は前年同月比で37・5%増の1兆2326億円。全体の輸出に占める中国向けの割合は21・3%と、4・8ポイント上昇した。中国は世界の工場とも呼ばれ、日本からは非鉄金属や、半導体の製造装置といった完成品を作るための部材や製品の輸出が多い。
ただ、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「中長期的には、バイデン政権はサプライチェーンから中国を外す動きに出てくる」と米中摩擦の激化を指摘する。中国の生産や消費が停滞する恐れもあり、日本は過度な対中依存を抑える必要がある。(大柳聡庸)