朝晴れエッセー

ありがとう、おばあちゃん・3月5日

断捨離のため、本棚の整理をしていると8年前に94歳で亡くなった祖母の介護ノートが出てきました。自分が書いたもので、母と2人での懸命な居宅介護の日々がつづられていました。

祖母は認知症に加えて、大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)を骨折してからの3年間は車いすとベッドでの生活でした。

ページを繰ると食事や服薬、睡眠、そして排泄の記録が分単位で書いてありました。手書き文字にも余裕の無さが表れています。あのころは介護疲れから、また車いす生活の不憫(ふびん)さから、祖母を楽にしてあげたいと考えたこともありました。

つらい記憶が詰まったノート。これは処分してしまおう、と考えているとき、次の文章を見つけました。

「平成23年9月23日(金)午前0時5~35分 背中なでている間ずっと『ありがとう。おおきに』と何度も言ってくれる。10月10日(祝)午前1時30分 横になる。最後に『お茶飲む?』と聞くと『トイレ行きたくなるからいい』と言う。背中さすってる間『ありがとう。おおきに。あんたしんどいからもういいよ』と言ってくれる。10月30日(日)午前1時25分 背中、手、おでこなでる。『うわあ気持ちいい、ありがとう。ありがとう』と何度も言ってくれる」

ノートの文字はにじんでいました。書いたときに泣いたんだと思います。そして、いま落とした涙で文字はさらににじみました。孫だとわからなくても、気遣ってくれていたんだ。感謝してくれていたんだ。

ごめんね、おばあちゃん。おばあちゃんの優しい気持ち、すっかり忘れていたよ。

ありがとう、おばあちゃん。

●(=山へんに斥)本(きしもと)光司 50 京都府京田辺市