自由 強権

コロナ禍で強まる東欧の言論弾圧

オルバン政権は、記者だけでなく、市民の声も封じ込めようと躍起だ。

ハンガリーでは昨年、記者や国民らが新型コロナの感染対策を阻害する「偽情報」を流したと判断された場合、最大5年の禁錮刑を科す項目を盛り込んだ法律が成立した。ハルディ氏によると、ブダペスト市民が昨年4月ごろ、会員制交流サイト(SNS)上で政府の新型コロナ対策や地元の病院の対応を疑問視する発言をしただけで警察に拘束される事件があった。

スウェーデンの公民権擁護団体「シビル・ライツ・ディフェンダーズ」の調査では、ハンガリー警察はこれまでに同法に関連した捜査を130件以上実施。その大半は政府の新型コロナ対応への批判的な発言をめぐる事案だった。あるブダペスト市民は「法律には明確な基準はなく、政府に都合の悪い情報であれば、全て偽情報と判断される」と話す。

ポーランドでもメディアへの圧力が強まる。同国の最高実力者、カチンスキ氏が党首を務める政権与党「法と正義」に近い企業が昨年12月、国内24の地方紙のうち20紙を買収した。

180カ国・地域を対象にした国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」の世界報道自由度ランキングによると、ハンガリーは13年の56位から20年に89位に下降。ポーランドも22位から62位に順位を下げた。

戦後、共産党独裁体制にあったハンガリーとポーランドは1989年の民主化を経てEUに加盟した。しかし、EU内経済格差の不満が高まる中、シリア内戦などで2015年に大量に流入した難民・移民の受け入れを迫ったEUへの反発が強まり、強権政治が台頭した。

両国の強権化を懸念したEUは昨年末、新型コロナで打撃を受けた国を支援する復興基金で「法の支配」順守を資金分配の条件にした。ただ、両国が反発したため、当時の議長国ドイツは欧州司法裁判所が条件に違反したと裁定しない限りは資金が供給されるとの妥協案を示し、合意に至った。

シビル・ライツ・ディフェンダーズの研究調整官、ダムジャン・ザドラヴェブ氏は「EUは人権と民主主義の原則を両国に確実に尊重させる責任がある」とし、両国の監視のさらなる強化を訴えた。

■ハンガリーとポーランドの強権政治

オルバン氏は首相に返り咲いた2010年以降に強権政治を進め、ロシアなどをモデルとする「非自由民主主義」を宣言。移民・難民の排除やメディアに対する支配強化など、欧州連合(EU)が重視する法の支配などの価値を損なう政策を推進した。

一方、権威主義国家である中国に接近し、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に参画した。今年1月には、中国の製薬大手、中国医薬集団(シノファーム)のワクチンをEU加盟国で初めて承認。2月24日に投与が始まった。

ポーランドでは、カチンスキ氏が党首を務める「法と正義」が司法やメディアへの支配を強めている。

昨年7月に大統領選の決選投票が行われ、「法と正義」出身の現職ドゥダ氏が勝利。ドゥダ氏の勝利により、カチンスキ氏が主導する強権政治が継続する見通しとなった。