絶大な存在感を示す巨大ITが、状況に応じ強権を発動できることを示した今回の事態を受け、英国内でもFBに対する非難が相次いだ。
英紙テレグラフは2月23日、新型コロナウイルスに関する政府の情報などもFBで閲覧できなくなったことを挙げ「強硬な戦術は非民主的と批判されている」と指摘。「FBは世界中で罰を受けようとしている」と警告した。英下院のナイト議員は自身のツイッターで「FBは品がなく、無責任だ」と不快感を示した。
一方、国家主導による記事利用料支払いの義務化を疑問視する声も上がる。豪州の法案は広告収入の減少に苦しむ新聞や出版業などを救うために提出されたものだが、FBによる記事の閲覧制限などの対抗措置を招いた。英紙インディペンデントは19日、法案は狙いとは逆の効果をもたらしたと指摘。法案を提出した豪州政府の対応に「不備があった」との見方を示した。
「ウェブの父」と呼ばれる英計算機科学者、ティム・バーナーズ=リー氏も豪上院に提出した意見書で、IT企業が記事への一定の支払いを強制されれば、インターネットが機能しなくなる可能性があると訴えた。同氏は、ネット上のすべてのやり取りは負担を課されたり速度を制限されることなく公平、自由に行われる、という原則が優先されるべきだとの考えを示す。
英紙フィナンシャル・タイムズは今回の問題が「(各国が)ニュース市場に法的に介入して実現できる効果と限界を評価する上で、重要な要素となるだろう」と論じた。(ロンドン 板東和正)
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≪ポイント≫
・豪紙、記事制限は「陰謀論拡大に寄与」
・FBの圧力を中国と同列視する社説も
・強硬姿勢背景に「政府主導への拒否感」
・豪政府の法的介入は「逆効果」指摘も