新型コロナウイルスに感染し、入院した自民党の竹本直一前IT担当相(80)は1日までに産経新聞の取材に応じ、「三途の川をのぞいてきたようなものだった」と振り返った。軽症から急変し、意識を失ったという。重症化しやすい高齢者に当たる竹本氏は「絶対にかからないほうがよい」と述べ、感染防止の徹底を訴えた。
--入院の経緯は
「基礎疾患はなく、初めての入院だ。昨年12月23日夜、体温は36度台前半で、ほとんど自覚症状はなかった。翌24日朝はせきが出た。事務所でコロナの陽性者が出ていたので、秘書に勧められ、都内のかかりつけ医に行った。重症で即、入院。病院に着いたあたりから意識と記憶がない」
--治療は
「集中治療室(ICU)に入り、『人工心肺装置(ECMO=エクモ)をつけてよいか』と聞かれ『やめてくれ』と答えた。そこは覚えている」
--症状は
「ずっと譫妄(せんもう)、つまり妄想の世界の中という状況だ。例えば、ロンドンの首相公邸に招待され、屋外に出て『寒い』と感じ、意識が混濁している中で寝てしまう。起きるとICUにいる。両手はベッドにつながれて身動きが取れない。点滴だけで食事はできない。うめいたり、『人を呼んでくれ』と言っても返事がない。(年末年始をまたいで)10日間ほど続いた。息苦しさはなかった。後遺症もない」
--その後は
「1月3日か4日にICUから出て、感染症病棟に入院した。原則、部屋から出てはいけない。つらかった。2月4日に退院し、12日までリハビリのために入院した。体重は6キロ減り握力は8キロにまで落ちた。携帯電話は重く感じ、牛乳のふたが開けられなかった。筋力トレーニングや歩行訓練をした。日常生活に支障をきたす人もいると思う。絶対にかからないほうがよい」
--振り返って
「自分の体力を過信していた。医師には『もう少し遅かったら駄目だった。奇跡だ』といわれた。三途の川をのぞいてきたようなものだ。医療従事者と秘書に感謝したい。感染する前にワクチンができていたら打っていたと思う。コロナに感染しない、させない行動を徹底してほしい」
(聞き手 沢田大典、写真も)