書評

『中東を動かす帰属意識 近くの隣人より、遠くの血縁』林幹雄著

 アラブ諸国とイスラエルの国交樹立を通して世界に新たな影響を与えている中東。現地で独特の社会を長く研究した駐在員が、イスラム教以前のアラブ世界の部族社会を知ることに焦点を当てて中東の真の姿を紹介し、世界を読み解くカギを提供する。

 中東にはイスラム教以外の少数派も各地で生活している。それらを通してこれまでの視点では見えなかった中東の現実が浮かぶ。そのうえで、イスラエルと国交正常化に踏み切ったアラブ諸国の背景と思惑を鋭く分析。発刊を前に他界した筆者の思いが伝わる。用語解説も中東報道の理解に役立つ。(ミルトス・2500円+税)

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