ミャンマーでクーデターが発生して以降、日本政府は国軍との独自のパイプを使い、拘束されたアウン・サン・スー・チー氏らの解放や民政復帰を働きかけてきた。日本はミャンマーと良好な関係を築いてきたほか、厳しい制裁などで追い込めば中国への接近を招きかねないためだが、デモ参加者が銃撃で死亡するなど事態は悪化しており、日本としても政府開発援助(ODA)の新規案件停止などを検討している。
「1日や1週間で急に変わるという状況にはない」
茂木敏充外相は2月26日の記者会見でこう述べ、ミャンマー情勢の早期改善は難しいとの見方を示した。政府はこれまでクーデターを非難する一方、国軍関係者を対象にした制裁などを打ち出す欧米とは異なる立場を取ってきた。日本は過去の軍政下でも関係を維持し、地道に民主化を支援してきたからだ。
今回も国軍、スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)の双方にパイプを持つ丸山市郎駐ミャンマー大使が抗議デモへの武力行使などをやめるよう軍に働きかけている。こうした取り組みは各国からも一定の支持を得ており、外務省幹部は「10年前ならすぐに制裁と言っていた米国もそんなに簡単なことではないと分かっている」と話す。
制裁で国軍に方針転換を迫ることはできるが、中国への接近を後押しする懸念もある。日本は1988年や2003年に情勢が悪化した際もODAの新規案件を見合わせたが、当時は中国の拡張主義が今ほど脅威とはなっていなかった。別の外務省幹部は日本の立場について「ミャンマーが中国に頼らざるをえない状況を作ってはいけない。かといって、クーデターを認めるわけにはいかない」と説明する。
政府はODAの新規案件を停止する場合も人道支援などは継続する考えだ。