深層リポート

埼玉発 コロナ禍の首長選「現職優勢」 有事は安定重視? 投票率も低下

「有事の際は政策の継続性や安定感を求める声が高まる上、コロナ禍では選挙戦自体が盛り上がりにくい。現職に有利に働く要素がてんこ盛りだ」

地元への関心薄く

ただ、県外を見渡すと、この傾向は必ずしも普遍的なものではないようだ。昨年に全国で行われた市長選のうち、新人が現職を破った選挙は21・2%(25市長選)で、前年の17・0%を上回った。

全国と埼玉県の傾向の違いの背景として、考えられる要素の一つが投票率だ。

新人が勝利した昨年の全国25市長選のうち約7割は前回よりも投票率が上昇していた。対照的に、埼玉県内の4市町長選は全てで投票率が低下し、うち新座市長選を除く3市町長選は過去最低となった。

埼玉大の松本正生(まさお)教授(政治意識論)は「埼玉県には東京都内に通勤する『埼玉都民』が多い。このため、地元への関心が薄く、投票率も低くなりやすい土壌がある。コロナ禍で有権者が『選挙どころではない』状況に追い込まれた結果、投票率の低下が加速し、新人の苦戦につながったのではないか」と分析している。

新型コロナウイルス感染拡大と地方選挙】 昨年4月の緊急事態宣言発令を受け、公明党は地方選挙を延期する特例法の制定を訴えたが、実現の機運は高まらなかった。自民党の二階俊博幹事長は同5月、公明党の斉藤鉄夫幹事長(当時)との会談で「現状では厳しい」と伝えた。海外では、英国やポーランドで感染拡大の影響によって選挙が延期されたケースがある。

記者の独り言】 「低投票率は必ずしも悪ではない。地域が大きな問題を抱えていない証だ」。埼玉県内のある首長は胸を張って言い切る。とはいえ、選挙が注目を集めなければ、地元の問題が認知される機会も失われる。新型コロナウイルス対応で首長の手腕が問われる今だからこそ、自らの持つ一票をしっかり投じたい。(竹之内秀介)