新型コロナウイルス禍で需要が高まっている移動手段が自転車だ。公共交通機関を避けての通勤・通学や食事宅配サービスで使用する人が増えているが、交通マナーでのトラブルも散見される。神奈川県警によると、昨年の自転車による違反の摘発件数は2千件を超え過去最多。需要の高まりの裏で、事故を未然に防ぐための安全啓発活動がコロナで激減しているなどの課題もある。(太田泰)
コロナ禍で、自転車の利用率は全国的に増加している。au損害保険(東京)が昨年9月、全国の自転車利用者1千人を対象に行ったアンケートでは、コロナの流行後に自転車の利用頻度が「増えた」「やや増えた」という回答は全体の23・9%だった。「減った」「やや減った」という回答(12・4%)の2倍近くで、4人に1人の割合で利用頻度が増えたことが分かる。増えた理由は「外出自粛による運動不足解消のため」が59・8%(複数回答)で最多だった。
令和元年に保険義務化
自転車に関しては近年、重大な事故の発生や高額な賠償が注目されている。平成20年9月に神戸市内で当時小学5年の男児が乗った自転車が散歩中の女性に衝突し、女性が寝たきりとなった事故で、神戸地裁は男児の母親に約9500万円の賠償を命じた。
神奈川県内では29年12月に、川崎市内で「ながらスマホ」で電動アシスト自転車に乗っていた女子大学生が高齢女性に衝突し、死亡させる事故が発生。この事故の重過失致死罪で在宅起訴された被告に、横浜地裁川崎支部は禁錮2年、執行猶予4年(求刑禁錮2年)の判決を下している。
全国の自治体では保険の加入を条例などで義務化する動きが広がり、神奈川県も令和元年10月から保険加入を義務化した。今月、同県が公表した「令和2年度県民ニーズ調査結果」で、保険に「加入している」と答えたのは74・8%。条例施行前の平成30年度の調査(51・8%)に比べて、20ポイント以上増加している。