気候変動で「ヒートアイランド現象」が深刻化し、都市部の暑さが加速する:研究結果

「熱に当たる面積を2倍にすれば、中まで熱が通りやすくなります。これはどういうことかというと、体積と面積の比率を変えたわけです。子どもの場合もまったく同じです。大人のほうが高温にうまく対処しやすいのは、体温調節機能が発達しているのもありますが、身体の深部へ熱が届くまで時間がかかるからでもあります」。一方、子どもの場合は「周囲の熱はすぐに身体の中にこもってしまう」のだという。

気候変動とヒートアイランド現象というふたつのリスクを同時に抱える状態を、モラはふたりの敵と同時に戦う状態になぞらえる。「気候変動との闘いは、マイク・タイソンを相手に戦うイメージです。そこに今回の論文で示されたようなヒートアイランド現象が加われば、マイク・タイソンにジャッキー・チェンが加わったようなものですね。ふたり同時に相手にするなんて、対抗しようがありませんから」

対抗策の「緑化」は雇用創出にも

気温と湿度の変化は、都市にどのような影響を与えるのだろうか。これをモデル化するため、ジャオらは前述した統計モデルをもとに「エミュレーター」をつくりだした。これは複雑な気候モデルを模倣しつつ、より都市部に焦点を絞ったものだ。

次に、このエミュレーターを20余りの世界規模の気候モデルから得た結果に当てはめ、中程度と高程度の温室効果ガスの排出が続いたと仮定して、おおまかに全体像をとらえた気候モデルの出力を都市レベルに変換した。すると、温室効果ガスの排出が中程度の場合、地球上の都市部の気温は今後80年間で平均1.9℃上昇すると予測され、高程度の場合は実に4.4℃まで跳ね上がったのである。

どこであれ都市に暮らす人にとっては全体として暗い見通しだが、都市部の場所によってその影響は変わってくるようだ。モデリングでは米国北部、特に中西部の北部で米南部より気温が上昇すると予測された。相対湿度に関しては、世界的にみて内陸部の都市は乾燥する傾向にあり、沿岸部のほうが湿度が高くなるという。後者は海が近いことを考えれば理解できるだろう。

一方で、こうした過酷な熱波に対処する術がないわけでもない。田園地帯のように都市部の緑を増やせばいいのだ。公共空間を緑化すれば景観は美しくなり、太陽をさえぎる日よけもできる。木々の葉は小さな空調設備のごとく、水分を蒸発させて周囲の温度を下げるはたらきもある。太陽光を受ける舗装面が少ないほど、人間の手による人工的環境が吸収する太陽光エネルギーも減る。

米国ではバイデン政権が、ニューディール政策の一環として設けられた市民保全部隊[編註:1933年の世界恐慌時に失業対策の一環として設けられたプログラム。失業者に植林などさまざまな環境保全活動に参加してもらうもの]を復活させ、人々に緑化事業に従事してもらう構想も打ち出している。このプロジェクトは特に非白人や低所得者のコミュニティにとって重要になるだろう。こうした層の暮らす地域は、人種差別的な住宅政策がとられてきた結果として緑が少ない傾向にあり、ヒートアイランド現象の打撃がより大きいと考えられるからだ。

「緑化事業は雇用を生む」と期待を寄せているのは、米国の非営利団体Climate Interactiveの共同ディレクターであるエリザベス・サウィンである。同団体は気候変動と不公正の結びつきに注目した取り組みを続けている。例えば、緑化を進めるためには育苗施設などでの栽培や植栽、継続した手入れなどが必要となり、それぞれの作業に人手がいる。

「これをコミュニティと連携して進められると、住人に新たなスキルを習得してもらう機会になります。そうすれば投資になりますし、避けがたい気候変動に都市を適応させていく助けになるはずです」

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