岩手・大槌町の被災若者支え続けた奨学金、大阪市大病院の医師ら最後の贈呈

 「カルテやデータではなく、まず患者に向き合い信頼を得る。医療の原点を改めて感じた」。現場で診察した大阪市立大病院の日野雅之副院長(61)が記憶をたどる。

 チームが被災者と顔なじみになった4月11日、医療支援は打ち切りとなった。「大阪弁やジョークに元気をもらった」「また戻ってきてほしい」。被災者から別れを惜しまれたという。

 医療支援は自衛隊に引き継がれ、被災した地元の病院も再開に向かっていた。しかし大阪市立大病院の医師らは、町から去ることに胸を痛めていた。

 「縁があった大槌町に顔の見える支援を続けよう」

 現地から報告を受けていた大阪市立大の荒川哲男学長(70)は23年3月下旬、有志のボランティア団体「なにわすまいるず」を立ち上げた。医療支援終了後も被災地を支えたいという、スタッフの思いを受けたものだ。

 団体は大槌町の将来を担う中高生のための奨学金を創設。職員や学生が利用する大学病院のレストランで復興支援メニューを開発し、1食あたり200円の寄付を集めるなどした。

 24年以降、作文による選考を通過した数人に、返済不要の7万~10万円の奨学金を贈呈。最終回となった今年度の5人を含む計28人を支援してきた。

 なにわすまいるずの活動を取りまとめてきた小児科医の山口悦子医師(55)は、「子供には目の前の困難を受け入れて先へと進む力がある」と実感。一定の役割を果たした奨学金の贈呈は今回が最後となったが、「災害は各地で起きる。お互いさまの心で支援のリレーをつなぎたい」と話した。