電車内での痴漢行為を疑われて逃げる際、追いかけてきた男性に暴行を加え、駅の階段から転落させて大けがを負わせたとして、傷害罪に問われた元警視庁警部補の男(53)の判決公判が26日、東京地裁で開かれ、吉崎佳弥裁判長は暴行を認定する根拠が不十分だとして無罪を言い渡した。被告は警視庁でSP(警護官)を務めていた。
検察側は階段踊り場で男性が腕を回して被告を捕まえた際に、被告が上半身をひねって男性を転落させたと主張し、懲役2年を求刑していた。男性は捜査段階では「体を捕まえた」と供述していたが、公判では当時の記憶がないと証言。階段踊り場をとらえた防犯カメラの映像もなかった。
吉崎裁判長は判決理由で、階段下からの防犯カメラの映像について、「体をひねる暴行と、(男性と一緒に転落した際の)被告の客観的な体勢が合致しない」と指摘。「男性がつまずいたり、階段を踏み外したりした可能性を排除できない」と結論づけた。
被告は昨年2月17日朝、東京都千代田区の都営地下鉄三田線神保町駅構内で、20代の男性に頭蓋骨骨折などの大けがを負わせたとして起訴された。