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宝塚歌劇団星組トップスター礼真琴(れい・まこと)主演のミュージカル『ロミオとジュリエット』(潤色・演出=小池修一郎、演出=稲葉太地)が兵庫・宝塚大劇場で開かれている。平成22年、まだ入団2年目だった礼が初めての役「愛」に大抜擢(ばってき)され、「皆さんに名前を知っていただけるきっかけとなった」のが本作。それから11年-。舞台を通じて、トップスターに上り詰めた礼のシンデレラストーリーをたどることができる。
(田所龍一)
平成22年春、演出家の小池氏は7月に宝塚歌劇で初めて上演する星組公演『ロミオとジュリエット』(主演・柚希礼音=ゆずき・れおん、梅田芸術劇場)に、海外の公演にはなかった新しい役を取り入れようと考えていた。
「フランスやロシアの公演ではせりふのない『死』という役がすでにあった。宝塚版ではそこに『愛』という役を加え愛と死の相克をテーマに追っていく形をとったんです」
愛を誰にしようか…。小池氏は漠然と考えながらある日、東京宝塚劇場の稽古場の廊下を歩いていた。
「窓がありましてね。稽古のようすが見えるんです」。ちょうど星組の全国ツアー公演、レビュー『ボレロ』の稽古が行われていた。何気なく稽古を見た小池氏は、その場に立ち尽くした。
「そこに礼がいたんです。まだ2年生なので稽古場の隅っこにいました。ジャンプ力のすごい子-というのは聞いていましたが、稽古場で見せたしなやかな体の動き、すばらしい身体能力は下級生のものではなかった。この子を使わなければもったいない-そう思いました」
礼の「愛」抜擢が決まった。礼は苦しんだ。セリフもなく、表情とバレエのような体の動きで「愛」を表現する役に、「何をしたらいいのかが分からなかった」という。