東京都の新型コロナウイルス軽症者向け宿泊療養施設として用意されていたパラリンピック強化拠点「日本財団パラアリーナ」(東京都品川区)が今春にも、パラ競技団体の練習施設として再び開放される見通しであることが分かった。施設は昨年、新型コロナ感染拡大に伴い、一時閉鎖され、療養施設に転用されていた。24日で東京パラ開幕まで半年。代表選手の集中強化を進めたい競技団体にとっては朗報となりそうだ。
パラアリーナは、障害者スポーツを支援する日本財団が平成30年6月に開設。車いすなどを利用するパラ競技は、体育館の床の損傷が激しくなることから、公共施設側が貸し出しを敬遠。練習場の確保に苦慮していたパラ選手にとっては、心置きなく練習に打ち込める施設になっていた。
約3千平方メートルの敷地はバリアフリー仕様で、施設内にはパラ競技である車いすラグビーが3面、ボッチャは8面のコートなどが敷設された。一時閉鎖が決まるまではパラ競技団体が利用し、ほぼ100%の稼働日率だった。
昨年4月、新型コロナ感染拡大に伴い、施設を閉鎖。その後、日本財団側は都の宿泊療養施設として貸し出し、かつての練習場には、軽症者が療養するためのベッドが置かれた。東京パラを目指す選手たちは重要な練習拠点を失った。
しかし、施設はその後、第3波で感染者が急拡大しても宿泊療養施設として用いられることは一度もなかった。各ベッドがパーテーションで区切られただけの施設は、宿泊療養を「個室」とする厚生労働省のマニュアルに沿っておらず、療養施設としての活用は緊急的な意味合いが強かったためだ。
こうした状況から、複数の競技団体がパラアリーナの利用を希望する要望書を提出。日本財団側も考慮の末、方針を転換し、パラ競技団体への貸し出しを再開する方向で都との協議を始めた。
現在、パラアリーナの事務所部分は、近隣の船の科学館駐車場に設置された別の感染者宿泊療養に対応する医師らの業務スペースとして利用されており「この事務所部分がパラアリーナ側に戻れば、選手の練習用に利用再開されるのではないか」(都関係者)という。
こうした流れにパラ競技関係者からは歓迎の声があがった。閉鎖前には週3回の公式練習会を実施していた日本パラ・パワーリフティング連盟の吉田進理事長は「パラアリーナは広く、トレーニング用の機材も多く置ける。練習再開は強化に向けて大きな後押しになる」と語った。(植木裕香子、石原颯)