わたしたちが捨てたガジェットは「電子ごみ」になり、途上国の人々の健康を害している

廃棄物の大半が先進国からやってくる

こうしたなか2020年8月には、アグボグブロシーの有毒物質に関する懸念に応えたアクラの警察が、電子ごみを焼いていた8人を逮捕した。しかし、逮捕を繰り返しても、電子ごみを燃やす行為をやめさせることはできそうにない。

イブラヒムは自身が逮捕される可能性はもちろんのこと、自分の仕事がもたらす健康被害もわかっているという。そして次のように語る。「仕方ないさ。もっといい仕事につければ出ていくつもりだけど、いまのところはこうして燃やすことでやっていくしかない。ぼくにはそれしかないから」

ガーナに輸入される電子機器や電気部品のおよそ85%が、欧州連合(EU)加盟国からのものだ。輸入後は、そのかなりの部分が電子ごみとして廃棄されている。欧州で中古品になったり廃棄されたりした電子機器のうち、正式なリサイクルや収集のシステムに回るのはわずか35%にすぎない。

残りは単に捨てられ、ルールを守らない状況下でリサイクルされるか、ベナンやガーナ、ナイジェリアなどに輸出される。なかでもガーナは、09年に年間約21万5%2C000トンもの電子ごみを輸入している。住民ひとり当たり9kgに相当する量だ。

アグボグブロシーの廃棄物のほとんどは、古いテクノロジーを利用したものだ。しかし、最近は多くの日用品に回路基板や電子機器が組み込まれていることから、こうした廃棄場にたどり着く電子ごみが今後さらに増えることだろう。

家具や衣服、建物の壁から電子機器を分離して収集する作業は可能だが、メーカーにしてみれば材料を再利用する価値はない。こうして電子ごみが埋め立て地に行き着いたり、発展途上国に輸出されたりする可能性が高まっていく。

ガーナでは、中古品を修理した携帯電話やノートPCの人気が非常に高い。元の価格に比べるとわずかな費用で購入できるからだ。一方で、こうした中古の電子機器は寿命が短いことから、すぐに使い捨てされ、結局はアグボグブロシーのような場所に廃棄されることになる。

“抜け穴”から流れ着く廃棄物の山

アフリカにおける電子ごみの85%は、こうした国内消費によるものであり、電子機器の世界的な流れを効果的に取り締まることの難しさを浮き彫りにしている。1992年に発効したバーゼル条約は、経済協力開発機構(OECD)加盟国からの有害廃棄物を発展途上国に移動することを犯罪行為と認めているが、到着後すぐに修理される電子機器については免除規定がある。

この免除規定を都合よく利用しようとする業者たちは、電子ごみに「すぐに中古品として販売される電子機器」という札を付けることで禁止を回避し、国境を越えた途端に廃棄することも可能だ。一方で、中古品の市場があれば、機能しなくなった電子機器の大部分が実際に修理されて再び販売されることになるが、修理する過程からもごみは出る。たとえ最良のシナリオであっても、修理された携帯電話やコンピューターは、多くの場合すぐに壊れて、結局はごみ捨て場に行き着くことになる。

アグボグブロシーで働くシャイブの関心事は、とにかく生活していくことだけだ。「クリスマスが近づいてくると、ぼくらはみんな、故郷の家族に送るための金が必要になる。だからもっと電子ごみを燃やして、もっと金を稼いで、お母さんを幸せにする必要があるんだ」と、シャイブは言う。

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