わたしたちが捨てたガジェットは「電子ごみ」になり、途上国の人々の健康を害している

煙を吸い続けた代償

バーナーボーイたちが苦労して取り出した金属は、スクラップ業者やリサイクル業者に売ることができる。調子のいいときで1日に2ポンド(約280円)、悪い日でも0.5ポンド(約70円)になる。

この収入は、ガーナにおける1人当たりの推定生活賃金である1日約4ポンド(約570円)に比べると少ないが、アグボグブロシーやオールド・ファダマでは最も儲かる商売のひとつだ。イブラヒムよりも年上のバーナーボーイであるシャイブは、節約して残った金を故郷の家に送り、ふたりの妹たちの生活を支えている。

作業は太陽が沈み始める午後6時に終わるが、今度は毒性のある煙を吸い続けた報いを受けることになる。イブラヒムは煙が原因で胸が痛み、頭痛もする。シャイブは、せきの発作が起きると、たんに血が混じるようになった。

シャイブは金に余裕ができると、バーナーボーイたちに薬を売りに来る男から伝統療法の薬を買うこともある。シャイブによると、その飲み物は「心臓を洗ってくれる」のだという。まだ16歳のもうひとりのバーナーボーイは、体中が痛いが鎮痛薬を飲んでもまったく楽にならないとこぼしていた。

あらゆるものを包み込む毒

どのバーナーボーイたちも同じような症状を訴えているが、成人が電子ごみの汚染に長期にわたって晒されることについての調査は、十分には実施されていない。一方で、両親が電子ごみを扱う仕事をしている親から生まれた子どもや、子ども本人が電子ごみを扱う仕事をしている場合の重大な健康上の影響に関する資料は、ある程度は存在する。

インドの電子ごみ廃棄場で働く子どもたちは、肺の機能低下や皮膚疾患、けいれんを起こす胃疾患、肝臓障害などを経験している。同じ条件下の妊娠女性にも、死産や早産が増えている。

シャイブと一緒に働いていた数人は、体調の悪化で働けなくなり、北部にある自分たちの村に帰った。「回復しなかったやつもいるし、村で伝統療法の治療を受け続けているやつもいるんだ」と、シャイブは語る。

アグボグブロシーの敷地内や周囲にいる人々は、これらの煙を「あらゆるものを包み込む毒」と呼んでいる。空気中だけでなく、土壌や水、そして自分たちの食料にまで入り込んでいるというのだ。

実際のところ、残留性の有機汚染物質やダイオキシン、鉛や水銀のような金属などの有毒なう物質が電子ごみを燃やすことで放出される。そして住民たちが呼吸したり、汚染された食べ物や水を摂取したりする際に吸収されていく。

バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)をはじめとする民間の監視団体の報告によると、アグボグブロシー周辺で集めたニワトリの卵が、驚くほど高濃度の有毒物質で汚染されていることがわかっている。成人がそうしたニワトリの卵を1個食べただけで、欧州食品安全機関が勧告している耐容一日摂取量の220倍の塩素化ダイオキシン類と、4倍のポリ塩化ビフェニル(PCB)を摂取することになるという。PCBのような化学物質は、その環境毒性と、がんの原因になる可能性があることから、英国では1981年に使用が禁止されている。

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