いきもの語り

殺処分寸前だった被災犬 セラピードッグに 

セラピードッグとして活躍する被災犬たちに囲まれる国際セラピードッグ協会の創始者、大木トオルさん=15日、千葉県(本江希望撮影)
セラピードッグとして活躍する被災犬たちに囲まれる国際セラピードッグ協会の創始者、大木トオルさん=15日、千葉県(本江希望撮影)

 東日本大震災から、まもなく10年。震災後、住民が去った福島県の警戒区域内に取り残され、殺処分寸前だった犬たちが、一般財団法人国際セラピードッグ協会(中央区)に保護されて育ち、「セラピードッグ」として医療や介護の現場で活躍を続けている。

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 「みんな、おいで」

 千葉県にある協会のトレーニング施設。ドアが開き、ハンドラー(訓練士)に連れられ、犬たちが続々と部屋に入ってきた。毛の色も大きさも違う。目の見えない犬もいるが、そろって赤十字のマークが入った緑色のベストを着けている。セラピードッグとして活躍する被災犬たちだ。

 患者の治療や高齢者のリハビリなどの現場で付き添い、心身のケアをサポートするセラピードッグは、米国で60年以上の歴史があり、協会の創始者でブルースシンガーの大木トオルさんが日本に導入した。平成14年に設立された同協会では、捨て犬や被災犬をセラピードッグに育成する活動を行っている。心身の健康を回復した後、2年以上かけて45以上のカリキュラムを習得し、施設で実習を重ねた後に、セラピードッグとして認定される。

 黒茶色の「きずな」は、震災の年の平成23年12月、福島県二本松市の山間で捕獲され、保健所に収容。同じく殺処分対象だった「日の丸」、兄弟犬の「福」「幸」とともに、協会に保護された。この4匹はカリキュラムをクリアし、現在もセラピードッグとして活躍している。

 「きずな」は、記者の目をまっすぐに見つめ続け、「日の丸」は、頭をなでた手を優しくペロペロとなめた。セラピードッグから受け取る安心感や温かさ。初対面の犬からこうした感覚を味わうことに驚いた。

 「彼らは苦しみ、痛みを知っているからこそ、人の心に寄り添い、力を与えることができる」と語る大木さん自身も、過酷な子供時代を過ごしている。

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