【ワシントン=黒瀬悦成】バイデン米大統領は19日、オンライン形式で行われたミュンヘン安全保障会議で演説し、中国との関係について「長期間にわたる戦略的競争に備えなければならない」と述べ、米国と欧州、アジアの民主主義諸国が「平和の確保や共通の価値観の擁護」に向けて連携していくべきだと強調した。バイデン氏が国際会議で外交・安保問題に関し演説するのは初めて。
バイデン氏は「中国との競争は厳しいものになる」と指摘し、中国による不公正な貿易慣行や威迫的行動といった、国際経済システムの基盤を弱めるような行為を押し戻す必要があると指摘した。
また、企業統治(ガバナンス)の透明化など、中国を含む全ての国が「同じ規則に従って行動すべきだ」と表明したほか、サイバー空間や人工知能(AI)、バイオ技術などをめぐる行動規範を民主主義諸国が主導して形成していくべきだと語った。
さらに、ロシアに関しても「私たちの民主体制を攻撃し、統治システムの土台を壊そうとしている」と指摘し、中国からの脅威と同様に、民主主義諸国が連携して対処していく必要があると訴えた。
その上で、ロシアによるウクライナ侵攻や世界的なハッキング行為に対抗していくことは、米欧の集団的な防衛にとって死活的に重要だと強調した。
バイデン氏は一方で、「(対中露で)反射的に反対したり、冷戦時代の硬直的な陣営に回帰してはならない」とも指摘し、新型コロナウイルス対策などの世界的な課題では中露とも協調していく必要があると主張した。
気候変動問題に関しても「世界の存亡に関わる危機だ」とし、「これ以上対応を遅らせることはできない、失敗すれば全人類が苦しむ」と訴えた。
トランプ前政権が離脱したイラン核合意については、復帰に向けて「(欧米など主要6カ国とイランの枠組みでの)交渉に再び取り組む用意がある」と表明する一方、イランによる弾道ミサイル開発や周辺国でのイスラム教シーア派武装勢力の支援を念頭に「中東全体を不安定化させるイランの活動にも対処しなければならない」とし、イランにクギを刺した。
オースティン米国防長官は19日、国防総省で就任後初めて記者会見し、中国は「最優先で対処すべき課題だ」と述べ、北大西洋条約機構(NATO)などと連携して対抗していく考えを明らかにした。