東京電力福島第1原発事故の影響で、福島県から千葉県に避難した住民らが国と東電に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が19日、東京高裁であった。白井幸夫裁判長は東電への規制権限を行使しなかった国にも賠償責任があるとして、国の責任を否定した1審千葉地裁判決を変更、国と東電が計約2億7800万円を支払うよう命じた。
全国約30件の同種の集団訴訟で、国の責任に関する高裁判断は今回で3例目。国の責任を認めたのは、昨年9月の仙台高裁判決に続き2例目で、今年1月の東京高裁判決は国の責任を否定していた。
判決理由で白井裁判長は、政府機関が平成14年に公表した地震予測「長期評価」を「相応の科学的信頼性がある知見」とし、規制権限を持つ国が長期評価を津波対策の判断の基礎にしなかったことは「著しく合理性を欠く」と指摘した。
さらに、長期評価の公表から遅くとも1年後には、福島第1原発の津波対策をとるよう、国が東電に命じることができたと認定。震災までの約7年半の間に防潮堤の設置などの対策を取っていれば、原発は「全電源喪失の事態には至らなかった」と結論付けた。