シャンシャン迫る返還期限 ファンやきもき 上野動物園

エサの竹を食べるシャンシャン(東京動物園協会提供)
エサの竹を食べるシャンシャン(東京動物園協会提供)

 新型コロナ禍で昨年末から休園が続く上野動物園(台東区)のジャイアントパンダ、シャンシャン(雌、3歳)の返還期限が5月に迫っている。シャンシャンは上野動物園の生まれだが、所有権は中国側にある。新型コロナの影響で昨年12月末までの返還予定が5月に延期されたものの、休園中にもお別れのカウントダウンが刻まれる。再開と同時に、待ちくたびれたファンたちの「シャンシャン詣で」が始まりそうだ。(大森貴弘)

 シャンシャンの1日は午前8時過ぎに始まる。屋外か別の部屋に移動し、朝食をとる。主なエサは竹で、同園では孟宗竹(もうそうちく)や真竹など3種類を与えているという。このほか、リンゴやニンジン、草食動物用の固形飼料など、栄養バランスにも気を配っている。

 昼食は午後1時、夕食は午後3時ごろで、午後5時ごろには床に就く。普段は寝転がるなどのんびりと過ごし、食事の時間になるとエサを入れた麻袋などを器用に振り回したり転がしたりする。まるで遊んでいるような愛くるしい姿を見せるという。

 シャンシャンは平成29年6月、父のリーリーと母のシンシンとの間に生まれた。2頭の間の子供は24年にも生まれたが、生後間もなく死亡した。飼育方法を見直し、シャンシャンの場合は生後10日間ほど、授乳がうまくいっているか、特に注意深く見守ったという。

 福田豊園長は「毎日心配し通しだった。生後1週間くらいして、シンシンが世話をする姿を見てようやく一安心。シャンシャンをよくなめて、熱心に世話をしていた」と振り返る。

 同園でのパンダの成長は29年ぶりで、自然交配による誕生は初めてだった。世界的に見ても自然交配による繁殖は極めて珍しいといい、福田園長は「最新の技術を実践する貴重な機会になった」と語る。

 パンダと同園のかかわりは古い。昭和47年10月、日中国交正常化を記念して、ジャイアントパンダが国内に初めてやってきた。平成20年から約3年間「不在」にした時期もあったが、現在までほぼ継続して飼育を続け、繁殖にも挑戦している。意義について、福田園長はこう指摘する。

 「生息地から離れた場所で飼育することで種絶滅の危機を回避し、個体数の維持や増加に貢献できる。野生動物の『保全大使』と位置づけ、正しい情報発信も必要だろう」

 返還期限が迫る中、緊急事態宣言が延長され、休園は来月7日まで続く見通しだが、やきもきするファンも少なくない。今しばらくの辛抱を強いられるファンに、福田園長がシャンシャンのとっておきのしぐさを教えてくれた。

 「シャンシャンはおおらかで好奇心が強い。竹にも好き嫌いがあるようで、においをかいでから食べている。同じ種類の竹でも、よく観察するとシャンシャンの好みが分かるかもしれませんよ」

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