主張

GDPと株価 経済悪化の対応を万全に

 新型コロナウイルス禍が経済に及ぼした打撃の大きさを改めて印象づける数字である。15日に発表された令和2年の国内総生産(GDP)は、実質で前年比4.8%減となり、11年ぶりのマイナス成長を記録した。

 10~12月期は年率12.7%増で、2四半期連続の回復となったが、それでも通年ではマイナス圏だ。3年1~3月期は緊急事態宣言の発令でさらに悪化する恐れがある。

 一方で、同日の東京株式市場の日経平均株価の終値が3万円の大台を超えた。バブル期以来、約30年半ぶりの高値である。足元の経済が厳しさを増す中、株価が上昇を続けるのは異様な姿である。

 当然、市場の過熱感への警戒は怠れない。株高の背景には、日銀など世界の中央銀行が強力な金融緩和を行った結果、あふれた資金が市場に集中したことがある。大規模な財政出動も投資家の強気姿勢を後押ししたのだろう。

 だが、ここは1年前を思い起こしたい。コロナ禍への不安から世界中で株価が暴落し、東京市場でも3月に1万6000円台まで値を下げた。今後の感染状況次第では市場が一気に収縮するリスクがあることを忘れてはならない。

 大切なのは、コロナ禍がもたらす経済の現実を直視することである。2年10~12月期は「Go To」事業などで個人消費が喚起されたが、経済が十分に回復する前に第3波が本格化した。1月の景気ウオッチャー調査で街角の景気実感が悪化するなど、経済はむしろ二番底の様相を強めている。

 通常の不況期と違い、経済活動を抑える緊急事態宣言下では需要喚起策の再開も時期尚早だ。ワクチン接種の効果を待つばかりでは景気回復も見通せない。まずは雇用や資金繰りを支援する安全網を効果的に活用し、景気悪化が深刻化しないよう経済を下支えする取り組みを強めるべきである。

 企業業績は、電機などの製造業を中心に復調傾向をみせるが、外食や航空などの非製造業には苦境が続くところが多い。コロナ禍が1年以上になる中で、経営がいよいよ困難になった中小企業や個人事業主もあるだろう。

 こうした状況を見極め、きめ細かく対応することが肝要だ。実質無利子・無担保のコロナ関連融資の返済が始まる企業への返済条件の変更なども必要だろう。柔軟な姿勢で苦境を乗り越えたい。

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