話の肖像画

歌舞伎俳優・中村鴈治郎(62)(15)リアルな上方演出の魅力

《上方歌舞伎と江戸歌舞伎では同じ演目の同じ役でも演じ方に違いがあるものが多い》

代表的なのは、「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)・六段目」の早野勘平(かんぺい)です。勘平は、しゅうとを殺してしまったと思い込んで腹を切って死んでいくのですが、江戸のやり方は客席の方を向いて切ります。でも、上方の演出は家の隅の方で客席に背中を向ける形でひっそり切るんです。また、浅葱(あさぎ)色の紋服(もんぷく)を着るタイミングも違います。

美しい若者の不運な悲劇をあくまでも美しく描くのが江戸のやり方。上方はもっと写実的に演じます。私自身はリアルな上方のやり方が好きなんですが、いろんなやり方があるのが歌舞伎のおもしろさですね。

《父、坂田藤十郎さんは「仮名手本忠臣蔵」を、男女善悪7役を早替わりも入れて、ひとりで演じるというやり方で上演していた》

いずれ私もやってみたいですね。また、忠臣蔵を、上方の俳優を中心に上方の演出で、物語の最初から最後まで通し上演の形でやってみたい。それがいまの夢のひとつですね。これまで祖父の芸を継承しようという気持ちが大きかったのですが、父が亡くなったいま、父のやっていたことも受け継いでいければと思っています。(聞き手 亀岡典子)

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