【主張】森会長の辞意 心機一転の奇貨としたい

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が辞意を固めた。女性蔑視ととられる発言が国内外の反発を買ったことでの引責である。

 12日の組織委評議員会、理事会の合同懇談会で正式に表明する見通しで、後任は元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏を軸に調整している。

 森氏は招致から東京五輪に関わり、会長就任後は国際オリンピック委員会(IOC)や国内スポンサー企業などとの調整役を一身に担ってきた。

 その労は多とするが、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと述べた一連の発言は、内容もタイミングも悪すぎた。発言の方向性は五輪が目指すものとは明らかに正反対であり、新型コロナウイルス禍で五輪の開催そのものが危ぶまれる中での舌禍だった。

 五輪は人々に愛されてこその祝祭であり、自らがその阻害要因となってしまっては、辞任の判断もやむを得なかったろう。

 五輪への期待は落ち込みが激しい。その最たる原因はコロナ禍への不安だが、緊急事態宣言の効果もあり、幸い、感染は収束に向かいつつある。ワクチンの接種開始も近い。

 森氏の辞任を無駄に終わらせてはならない。会長の交代を心機一転の奇貨とするには、スポーツ界を代表する川淵氏は適任といえるだろう。Jリーグを創設し、日本バスケットボール協会の内紛を収めた剛腕に期待は大きい。

 1964年の東京五輪ではサッカー日本代表のフォワードとして8強入りを牽引(けんいん)した。今も国立競技場で味わった開会式の感動を熱く語る。組織委では評議員を務め、五輪開催に向けての熱意、決意を発し続けてきた。

 ただ、川淵氏は森氏より1つ年長の84歳であり、体調の不安もある。昨年2月、東京五輪選手村の村長に就任が決まった際には「人生最後の大役」と述べていた。組織委会長となれば、さらに大きな負担をかけることになる。

 これまでもスポーツ界は、ことあるごとに川淵氏の存在を頼ってきた。いつまで頼り続けるつもりなのか。後任に川淵氏の名が挙がることは、半面、スポーツ界に次代の後継者が誕生していない証しでもある。

 ここでもスポーツ界には、猛省を求めなくてはならない。