仏紙ルモンドが1ページの訃報を載せた漫画家谷口ジロー(2/2ページ) - 産経ニュース

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仏紙ルモンドが1ページの訃報を載せた漫画家谷口ジロー

 海外で注目されるようになったのは、日仏の出版社の交流の一環で、1995年に「歩くひと」(1990~91年)のフランス語訳が出版されたことだった。

 イタリアで美術史・油絵を専攻し、映画化もされた作品「テルマエ・ロマエ」で知られる漫画家のヤマザキマリ氏は「日本の多くの漫画作品がスペクタクルなハリウッド映画だとすれば、(谷口作品は)ベルリンやカンヌなど欧州の映画祭で選ばれるタイプの知性派向き」(双葉社「描くひと」)と評する。

 一方、谷口は自身の欧州での人気について「フランスに行って本屋などを見た人は私の本がたくさん積まれているのを見て驚きますね」と、同書の中で、バンド・デシネ(フランスのコミック、BD)原作者のインタビューに答えている。

 「遥かな町へ」のフランス版の販売冊数は日本版の2倍に上り、2011年にはフランスの芸術勲章シュヴァリエを受章。谷口の死去に際して、仏紙ルモンドはまるまる1ページを割いてその業績を伝えた。

まんが王国とっとり

 谷口は「遥かな町へ」のほかに「父の暦」(1994年)、「魔法の山」(2006年)などで出身の鳥取県の風景、人を描いている。

 子供のころから、鳥取を出ることだけが重要で、自由になりたいと思っていたという谷口が帰郷したのは、上京してから十数年後のことだった。先のインタビューで谷口はこのときのことを振り返り、「田舎ってこんなにいいところだったんだと、ようやく気がついたのです」と語る。子供のころ遊んでいた公園に行き、市街地を見下ろして、「自分はここで生まれて、ここがなければ自分はこんなことになっていなかった。鳥取を漫画の舞台にしてみたい」と思ったのだという。

 鳥取県は谷口のほかに、「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげる氏、「名探偵コナン」の青山剛昌氏らを輩出していることから、漫画を観光の起爆剤にと、県は平成24年に「まんが王国とっとり」を掲げた。谷口ジロー展は今回で3年連続の開催となる。

 谷口ジローの作品は、フランスだけでなく欧州各国や中国、韓国などでも翻訳し出版されている。県まんが王国官房課長補佐の野村芳幸さんは「水木、青山の両先生には常設の展示館が県内にある。谷口先生の展示は期間限定のミュージアム」と位置づけ、「国内だけでなく、フランスなどからの観光客に谷口先生の故郷である鳥取県に立ち寄ってもらうというねらいもある」と話し、アフターコロナの時代に期待を示した。