海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう」が高知県足摺(あしずり)岬沖で民間商船と衝突した事故で、事故前に艦艇の水中音波探知機(ソナー)や潜望鏡の不具合の報告がなかったことが9日、防衛省関係者への取材で分かった。人的ミスだった可能性が強まっており、海上保安庁は浮上時の確認不足が原因だったとみて、業務上過失往来危険や業務上過失傷害容疑を視野に調べている。
第5管区海上保安本部(神戸)は9日朝から高知港で、そうりゅう乗員への事情聴取など調査を開始。浮上の手順が守られていたかどうかを調べる。そうりゅうには艦橋のゆがみや、船体中央から横に延びる「潜舵(せんだ)」のうち右舷側が折れ曲がるなどの損傷があった。事故後、通信手段が3時間以上不通だったことも判明した。
海自トップの山村浩幕僚長は9日の記者会見で、「国民に大きな迷惑を掛けたことをおわびする」と述べ、長時間の通信不能について「反省すべきところだ。想定外は許されない」とした。衝突したとみられる香港船籍の貨物船「オーシャン・アルテミス」側にも謝罪の意を示した。
岸信夫防衛相は9日の記者会見で、海保の調査に全面的に協力する考えを示した。