紫外線で発電する植物由来の新素材「AuREUS」は、再生可能エネルギーの民主化を目指す

フィリピン発の新素材「AuREUS」。国際エンジニアリングアワード「James Dyson Award 2020」で「サステナビリティ賞」を受賞した。PHOTOGRAPH BY AUREUS
フィリピン発の新素材「AuREUS」。国際エンジニアリングアワード「James Dyson Award 2020」で「サステナビリティ賞」を受賞した。PHOTOGRAPH BY AUREUS

 フィリピンの27歳の大学生が発明した新素材「AuREUS」(オーレウス)は、紫外線からエネルギーを生み出す廃棄農作物由来の新素材だ。調光レンズとオーロラ、そして薬草から着想を得たというこの技術はどう生まれたのか。そして、AuREUSが目指す再生可能エネルギーの民主化とは。開発者のカーベイ・エーレン・メグに訊いた。

TEXT BY ASUKA KAWANABE

フィリピンの大学生であるカーベイ・エーレン・メグが新しいソーラーパネルのアイデアを思いついたのは、小雨が降るある曇天の日だった。その日、調光レンズのメガネをかけていた彼は、日が陰っているにもかかわらず自分のレンズの色が暗く変化したことに気づいたのだ。

調光レンズは普通、紫外線の量に反応して色を変化させる。レンズの色が変わったということはつまり、曇りの日でも十分な量の紫外線が地上に降り注いでいるということだ。マプア大学で電気工学を専攻する彼は、すぐさまこの紫外線を使って曇りの日でもエネルギーを生み出す発電方法を考え始めた。曇りの日でも太陽光から電気を生み出す、廃棄農作物由来の新素材「AuREUS」の始まりである。

オーロラと薬草

温室効果ガスを排出しないクリーンな発電技術として太陽光発電が気候変動対策としても注目されるなか、天候や日光の照射時間に左右されずに安定して電力を供給できる発電技術の開発は急務になっている。これまで、バクテリアを使った太陽光発電から宇宙太陽光発電まで、天候に左右されない発電技術はいくつも考案されてきた。実際、紫外線を使った発電技術もすでに複数の企業が開発している。

だがメグにとって壁となったのは、そうした技術に必要なペロブスカイト構造と呼ばれる特殊な結晶構造をもつ化合物と、それを処理するための装置が自国で手に入りづらいことだった。そこで彼は、紫外線をまず可視光線に変換し、それを従来の太陽光発電のメカニズムによって電気に変える方法を考えた。

「たまたま観ていたオーロラのドキュメンタリーから着想を得ました」と、彼は言う。オーロラの発光現象の裏では、大気中の粒子が宇宙から降り注ぐ高エネルギーの粒子を低エネルギーに変換しているが、同様の仕組みを利用して高エネルギーの紫外線を低エネルギーの可視光線に変換すればいいのではないか、と考えたのだ。

そして、この変換に使う樹脂基盤の材料に、AuREUSのもうひとつの革新性がある。彼が使ったのは、廃棄予定になっていた農作物なのだ。

「農作物を使うアイデアは、祖母との思い出から生まれました」と、メグは言う。「小さいころから祖母が薬草を栽培するのを手伝っていたのですが、彼女が傷口の消毒薬として使っていたウコンのエキスに紫外線を可視光に変換する粒子が含まれていることを知ったのです」

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