司馬遼太郎 没後25年

映画「燃えよ剣」原田眞人監督「司馬史眼から未来が見える」

 当時はまだ、1本しか映画を撮っていないのに、とても大胆なお願いをしたと思いますが、それが若さですよね。そのときは断られましたが、映画会社に企画書を持ち込むなどさまざまに働きかけた結果、「関ヶ原」で実現しました。岡田さん主演で映画化できたことは、大きな自信になりました。

 実は、司馬作品3作目としての構想もあります。また岡田さんと組んで、リアルな忍者ものをやりたいですね。

 《重厚長大な司馬作品の映画化は生易しいものではない》 

 自分でやっていてなんですが、司馬作品が本当に好きな人でないと、映画化は無理だと思っています。簡単に手を出してほしくないですね。ちょっと原作を読んだだけではできません。先生が、活字であれだけふくよかに描いた人間像を映像で再現するのは、なかなかハードルが高いですよ。

 『燃えよ剣』の映像化にしても、先生が書いた『王城の護衛者』『胡蝶の夢』など幕末のすべての小説を読み込みました。新選組の誕生には、会津藩とのかかわりが欠かせませんから、『王城の護衛者』に登場する会津藩主・松平容保(かたもり)の要素を取り入れました。彼を描かないと新選組の実態が分かりませんからね。

《司馬作品との出合いは中学生だった》 

 長州びいきの祖父の影響で桂小五郎(木戸孝允)に興味を持ち、中学時代に短編集『幕末』を読んだのが最初です。「逃げの小五郎」「桜田門外の変」「奇妙なり八郎」などの短編があって、幕末の人間群像がとても面白かった。この作家は今まで読んできた作家とは違う。たちまちファンになりました。作品の中でたびたび出てくる「余談だが…」という歴史解説は、実際に話をしているかのような作家の体温を感じます。

 先生の小説や評論、エッセーを読むことで、例えば幕末なら幕末を生きた人間、その背景や歴史などさまざまなことが学べます。僕は「司馬遼太郎 人類学講座」の生徒で、先生からレクチャーを受けて育ってきた。そして今、映画を撮っている。そんな風に思っています。先生からかなりの影響を受けています。