話の肖像画

歌舞伎俳優・中村鴈治郎(61)(6)お客さまと一体の高揚感

《昨年の南座の顔見世は、期間を通常の約1カ月から2週間に短縮して開催。公演形態も、昼の部、夜の部の2部制から、各部2演目ずつの3部制に変更された。鴈治郎さんは弟の(中村)扇雀さんらと「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)・土佐将監閑居(とさのしょうげんかんきょ)の場」に出演した》

吃音(きつおん)の絵師、又平と、女房おとくの夫婦愛と芸術の奇跡の物語です。この作品にしたのは私の思いもありました。まず、兄弟でできるもの、ドラマがあって、最後はハッピーエンドで終わるものをやりたいと思ったのです。こんなご時世、お客さまに少しでもいい気持ちになってもらいたかった。実はこの作品の演出には、吃音が治るやり方と治らないやり方があるのですが、今回は治る方で演じました。それもお客さまに気持ちが明るくなっていただきたかったからです。

顔見世というと、思い出すのは子供の頃です。当時、うちは祖父の二代目鴈治郎と父(坂田藤十郎=当時、二代目中村扇雀)が「廓文章(くるわぶんしょう)」など上方のお芝居を上演していましたが、夜の部の最後が多かったですね。子供が起きていられないぐらい遅い時間帯でした。それでもお客さまが残っていてくださった。ありがたかったですね。(聞き手 亀岡典子)

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