鑑賞眼

新国立劇場オペラ「トスカ」 叙情的な愛の世界に酔う

オペラ「トスカ」第2幕(新国立劇場提供、寺司正彦撮影)
オペラ「トスカ」第2幕(新国立劇場提供、寺司正彦撮影)

 歌姫トスカと画家カヴァラドッシの悲恋を描いたプッチーニの人気オペラ「トスカ」。コロナ禍の中、東京都渋谷区の新国立劇場オペラパレスでこのほど(1月23、25、28、31日、2月3日)無事、上演された。

 同舞台は、イタリアの伝統的な演出手法で描かれた。19世紀ローマを模した荘厳重厚な舞台や衣装が見どころで、新国立劇場のレパートリーの中でも屈指の人気を誇るという。

 冒頭のカヴァラドッシの甘美なアリア「妙(たえ)なる調和」(第1幕)、トスカの絶唱「歌に生き、恋に生き」(第2幕)、カヴァラドッシの告別の歌「星は光りぬ」(第3幕)など全編に、誰がもが耳にしたことがある有名なアリアがちりばめられている。

 今回はコロナ禍ということで、関係者は初日を迎えるまでハラハラしたことだろう。昨年末、外国人の入国が停止されたが、この公演のため海外から招請された歌手と指揮者は何とか滑り込みセーフで入国し、隔離を経て無事、舞台に立った。

 また第1幕後半に登場する壮麗な「テ・デウム」(聖歌)のシーンは演出を変更。合唱団の一部を「それぞれ礼拝後、聖堂を出る」という演出に変え、下手舞台袖で歌っていたため、舞台上での合唱は一部のみだった。

 一方、冒頭のシーンで教会の室内を朝日が上手、そして下手と照らしたり、第3幕のサンタンジェロ城の露台の背景に広がる夜明けの空などの照明はすばらしかった。実は、この作品の照明を手がけた奥畑康夫氏が今年1月に死去。このニュースが公演期間中に入り、追悼の気持ちも込めて演じられていたそうだ。

 トスカ役は新進ソプラノのキアーラ・イゾットン、カヴァラドッシは世界屈指の人気テノール、フランチェスコ・メーリ。指揮はイタリア・オペラで絶大な信頼を集めるダニエレ・カッレガーリだった。

 この公演後、久しぶりにオペラ映画「トスカ」(1976年)のDVDを見ながら、それぞれ名場面を振り返ってみた。この映画は、全てのシーンが物語の舞台となった実在の歴史的建造物(第1幕サンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会、第2幕ファルネーゼ宮殿、第3幕サンタンジェロ城)で収録されている。