有本嘉代子さん一周忌 明弘さん亡き妻しのぶ

北朝鮮に拉致された有本恵子さんの写真を抱え、嘉代子さんの遺影を見つめる明弘さん=3日午後、神戸市長田区
北朝鮮に拉致された有本恵子さんの写真を抱え、嘉代子さんの遺影を見つめる明弘さん=3日午後、神戸市長田区

 北朝鮮に拉致された有本恵子さん(61)=拉致当時(23)=の母、嘉代子さんが94歳で亡くなり、3日で1年。夫の明弘さん(92)が神戸市長田区の自宅で産経新聞の取材に応じ、「文句を一つも言わず、できることを精いっぱいやっとった」と亡き妻をしのんだ。自身の体の衰えを感じるといい、「拉致問題が解決するまで生きていられるかどうか…」と不安な思いを吐露した。

 「いい人生だった」。嘉代子さんは晩年、連れ去られた娘の身を案じつつ、自らの人生をこう振り返っていたという。

 恵子さんの拉致被害が判明してから、夫婦は二人三脚で救出運動に奔走。幾度も悔しい思いをしてきたが、嘉代子さんには「やれることはやった」という思いがあったのかもしれない。

 明弘さんは、嘉代子さんについて「一度も『嘉代子』と呼ぶことはなかった」と打ち明ける。救出運動などいつも一緒に行動していたこともあり、名前を呼ぶことに気恥ずかしさがあったのだという。明弘さんは「死ぬ前に、優しく名前で呼んであげたかった」と言葉を絞り出した。

 拉致問題をめぐっては、トランプ前米大統領が関心を示したが、解決を迎えることはなかった。日米両国は新型コロナウイルス対策に追われ、早期解決を不安視する声もあがっている。

 拉致被害者の帰還には日米の連携が不可欠と考える明弘さんは、米国内で人種問題などで対立が続く現状を憂い、「アメリカ内部でまずは考えを一つにしないと話は前に進まない」と危機感を示す。

 拉致被害者家族の高齢化が進んでいる。昨年は嘉代子さんに続き、横田めぐみさんの父、滋さんも他界した。明弘さんは自身について、「体がだんだんとついていかれへんようになっている」と話し、時間との戦いに焦りをにじませた。

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