朝晴れエッセー

母のマスク・2月3日

一日の仕事を振りかえりながら、ペダルを踏んで家路を急いだ。

今日もコロナ感染者のニュースに気がめいる。行き交う人の顔半分は、白、黒、グレーのマスクで年齢不詳だ。知人でも通り過ごしてしまうだろうに…。あれこれ思ううちにわが家に着いた。

いつも通り玄関先で消毒スプレーで手先を消毒し、台所に立つ母の後ろ姿に声をかけた。

「ただいま」

「お帰り…」(ギョ!!)

ふり向いた母の白いマスクの中央に、真っ赤な大きな口が笑っている。

「福はぁ内、福はぁ内、コロナ外、コロナ外」

母は大きく手を広げて豆まきの格好をした。

「何、それ?」

やおら、マスクをはずした母は、捨てる前の白いマスクに赤のマジックで大きく笑う口を書いたという。

そのくらいでコロナ禍が収まるはずもないが、そのマスクで、うっかり買い物など行かないでくれよな。

もしかしたら、86歳の母の精いっぱいのコロナ追放対策だったのかもしれない。

井上正一 57 岡山県倉敷市