米政権、アジアで最初の試練 ミャンマーのスー・チー氏拘束を非難

 【ワシントン=黒瀬悦成】ブリンケン米国務長官は1月31日、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相ら複数の高官が国軍に拘束された問題に関し「重大な懸念と不安を表明する」との声明を発表した。バイデン大統領は、「アジア重視」を掲げてミャンマーの民政移管と民主体制の発展を支持したオバマ政権の副大統領だった経緯があり、今回の政変はバイデン政権のアジア政策をめぐる最初の試練となりそうだ。

 声明で、ブリンケン氏は国軍に対して拘束された人々の即時釈放を要求するとともに、「(与党・国民民主連盟=NLD=が勝利した)昨年11月の総選挙の結果で示された民意を尊重すべきだ」と訴えた。

 ブリンケン氏は「米国は、民主主義と自由、平和、開発を切望するビルマ(ミャンマー)の人々とともにある」と強調した。

 サキ大統領報道官も声明で「(国軍による)一連の行為が撤回されなければ責任者らに措置をとる」と警告した。

 バイデン氏は同日、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)から状況説明を受けたという。

 米国は、ミャンマー民政移管の翌年となる2012年、当時のオバマ大統領が同国を訪問し、民主化支持の立場を強く打ち出してきた。16年に軍政時代からの経済制裁を全面解除した。

 しかし、トランプ政権は19年、ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャの迫害に関与したとして国軍最高司令官ら軍幹部4人を制裁対象に指定。ミャンマー政府に対しても「迫害の責任追及に取り組んでいない」と批判していた。

 NLD政権はこれまで、日本や韓国、東南アジア諸国などからの投資拡大に努めてきた。かつての軍政が中国寄りだった経緯から、経済分野などで中国の影響力が強まるのを回避する思惑があった。

 米国も同盟諸国にミャンマーへの投資を奨励してきたが、今後、国軍の実権掌握が長期化し、米政権がミャンマーへの制裁に踏み切った場合、同国の対中傾斜が再び強まる恐れがある。

 一方、中国が今後、巨大経済圏構想「一帯一路」の推進に向け、インド洋沿岸の貿易の要衝であるミャンマーの取り込みを図るのは必至だ。「自由で開かれたインド太平洋戦略」を進めるバイデン政権としてもミャンマー情勢への一層の関与を迫られることになる。

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