日本で最も読書しない和歌山が逆襲期す「読書活動推進課」

 このほか、「時間がなく何年も読んでいない」=岩出市の女性会社員(27)=や、「面倒くさく、本は読む気がない」=有田市の男性会社員(58)=という回答があった。

 「読書する」と答えた人は年配者に多かったが、1カ月に数冊程度だった。

大学が少ない背景も

 なぜ和歌山では本があまり読まれないのか。

 読書教育に詳しい和歌山信愛大学の小林康宏教授は「和歌山県は海や山に囲まれアウトドアを楽しめる。また公共交通が充実しておらず、車やバイクで移動する人が多いため、電車内で本を読む機会が少ない。こうしたことが原因として考えられる」と分析する。

 さらに大学が少ないことも背景にあるという。文部科学省の令和2年度の学校基本調査では、和歌山県の大学・大学院数は4校で、徳島、香川両県とともに3番目に少なく、「読書する層の大学生が県外に行ってしまっていたことも影響している」と指摘する。

 こうした状況を打開するため、和歌山市教委は一昨年12月、読書活動推進課を設置。昨年6月にはターミナル駅の南海和歌山市駅に隣接する駅ビルに和歌山市民図書館が移転オープンした。蔵書数は約50万冊と公共図書館として特に多いわけではないが、しゃれた館内と駅に隣接した便利さで人気を集めている。

 建物は5階建て。1階に蔦屋書店やスターバックスコーヒーが入り、1~4階が図書館ゾーン。ソファが書庫の合間に置かれ、ほとんどのスペースで飲み物を手に本を読める。高い天井で開放感もある。平井薫館長(51)は「読書率を高めるきっかけづくりをしたい」と意気込む。

 市民図書館開設後、市全体の図書館貸し出し資料数は増えている。半年間の統計をもとに1年間の貸出数を試算すると3・1点で、平成30年度より0・8点多くなっている。

 小林教授は市民図書館について「市民は今後、もっと本に接するようになるのではないか」と期待する。

会員限定記事会員サービス詳細