「私が日本に住んでいたころ、常に声を大にして言ってきたのは、自分たちの国を偉大にし、個人の生活を満足かつ十全にするために必要である限り、日本人は西洋の科学や文明を存分に活用すべきではあるが、自分たちの持ち味である生活様式や国民性についてはあまねく堅持し、国家的なレベルだけでなく、個人的なレベルでも、日本人としての個性を守ってゆくべきだということだった」
わが国の「近代科学技術教育の父」と称される英国人、ヘンリー・ダイアーは1904(明治37)年に発表した主著『大日本』の第18章「(日本)社会に及ぼした数々の影響」でそう述べている。なぜか。「その過去を忘却し、その並外れた独自性のすべてをほうり出してしまうような国(民)は、真の意味で偉大と呼ぶ価値がないばかりでなく、実際、そうなりはしないからだ」とダイアーは断じている。
では、日本が守り続けるべき国民性とは具体的にはどのようなものなのだろうか。