絵本を味わう 子供とともに

「ふくはうち おにもうち」 怖さやつらさは幸せの表裏 

 節分の季節、そのタイトルに心ひかれる絵本があります。

 平成16年に岩崎書店から刊行された『ふくはうち おにもうち』(内田麟太郎作、山本孝絵)です。

 雪がちらちら降る夜更け、子だくさんで貧乏暮らしの男が1人で留守番をしていると、「さむいよう、さびしいよう」という声が聞こえてきました。戸を開けると、そこには鬼たちが立っていました。男は「こんな さむいばんに。おにも なにもない」と遠慮する鬼たちを招き入れ酒を勧めます。帰ってきたおかみさんと子供たちは鬼に腰を抜かします。鬼は、出ていってと泣いて頼むおかみさんをよそに、歌えや踊れの大騒ぎ。すると、「たのしそうな うちだのお」と、にぎやか好きの福の神がやってきました。鬼たちを見て逃げ出す福の神に、おかみさんは必死にしがみつきます。酒を勧められて酔った福の神につられて、おかみさんや子供たちも踊り出します。翌朝、鬼たちは帰っていきましたが、にぎやかなうちが気に入って、ひょいと神棚に座った福の神に、皆は「ありがたや」と手を合わせるのでした。

 ここに描かれた鬼は恐れられる存在とは程遠く、控えめで礼儀正しく、どこか愛嬌(あいきょう)があって憎めません。鬼もいろいろです。この絵本を読んだ子供たちは、そんな鬼の存在を面白がりました。ひょっこり現れた福の神もひょうきんで、その表情もユーモラスです。貧乏暮らしゆえ、舞い込んできた福を逃してなるものかと必死のおかみさんや子供たちの姿は笑いを誘うと同時に、生きていくことの切なさも感じます。

「おにに よばれて ふくのかみ おにが よんだか ふくのかみ ともに おどれば はるがくる」

 文中の言葉です。誰もが怖さやつらさ、悲しさから逃げたいけれど、それは幸せの表裏で、その後には必ずいいことがやってくることを感じさせてくれる味わい深い一冊です。(国立音楽大教授・同付属幼稚園長 林浩子)