朝晴れエッセー

魔法の蜘蛛の巣・1月29日

令和3年が明け、私は今年古希を迎える。とても信じられない。立派な高齢者だ。子供の頃から1人遊びが得意で、今でも気持ちは夢見る少女のままだ。

ところが今まで無意識にできていた何げない動作ができない。これが老いというものか。気持ちだけ若くても体力はしっかり老女。現実に向き合う70代が迫ってくる。それでも心が老けないよう努力する気持ちはまだくすぶっている。

若い頃、日本の国と外国の架け橋になるような仕事に憧れた。ただ夢だけを追いかけていた娘時代から一転、思いもかけず、というよりスーツのよく似合う運命の人についていったら農家の嫁になった。

自分の居場所と思えない日々がしばらく続いたが、猫の手ほどの足しにもならない農作業にも慣れてきた頃、家族が勧めてくれて英語塾を開いた。同時に日本の生活を体験したい外国人を一家族として迎えるボランティアもスタートした。

北欧を皮切りに、気が付けば37年間に18もの国から年齢、社会的立場を超えて一時家族がやってきた。

日本の田舎にはまだまだ衣食住に和心が息づいている。異文化に戸惑いながらも一つ屋根で暮らした彼らの思い出はどんな小さなことも色あせない。そしてそれが、私の居場所さえも宝物にしてくれた。

今日も地球上に張り巡らした魔法の蜘蛛(くも)の巣から、時空を超えた便りが田舎家に届く。心が老ける暇がない。夢見る少女は70代も現役で今年も発進です。

勝田ひさ子 69 京都府久御山町