話の肖像画

歌手・郷ひろみ(65)(28)表裏なく人を裏切らない

キリンカップサッカー2006「日本対スコットランド」では試合前の国歌独唱を行った =平成18年5月、埼玉スタジアム2002
キリンカップサッカー2006「日本対スコットランド」では試合前の国歌独唱を行った =平成18年5月、埼玉スタジアム2002

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《常にポジティブで全力投球の日々を重ねる》

人生は常に「バランスする」というのが僕の持論です。いいときもあれば悪いときもある。だからいつも気持ちを切り替える。ジタバタしてもしかたがない。「果報は寝て待て」もあるけど、自分から行動することもある。時間を無駄にしない。人生で与えられた時間というのは何が起ころうが、過ぎていくんです。振り返ってみたとき、むなしい時間にしたくない。そのため、自分は何ができるかをいつも考えているんです。たとえばコロナ禍で昨年の3、4月は自宅で待機していましたが、その期間はトレーニングのためにジムにも行けませんでした。トレーナーは僕専用のチャンネルを送ってくれて、自宅でトレーニングをできるようにしてくれた。それで毎日、トレーニングができました。

いつでも「郷ひろみとして出ていける」という準備をしておきたいタイプなんです。「郷ひろみ」でいる以上はね。いつか「郷ひろみ」を辞めるときが来ると思うんですけど、それは自分で決めることだと思っています。それが70歳で訪れるのか、80歳になるのか…。僕には見当もつかないけど。「郷ひろみ」でいるのは、ある意味、人を裏切らないということです。「ひろみも変わっちゃったよね」と言われないためにも…。たぶん、変わったと思われたときが辞めるときだと思っている。

ちょっと前、ゴルフのコーチであるプロギアの宮川まもるプロに「ドライバーの飛距離を20ヤード伸ばしたいんですが…」と聞いたんです。コーチが言いました。「ひろみさん、あと10キロ、体重を増やしてください。20ヤードは確実に飛びますから」って。体重を増やすか、「郷ひろみ」をとるか。いや「郷ひろみ」ですよね、ハハハ。だから太れません。なので飛距離も伸びません。

《プライベートも「郷ひろみ」…》

「見られている」「見られていない」を区別するのは面倒くさい。正直なところ、僕は「見られている方が楽」なんです。見られていないときは自分しかいないが、神様は見ている。つらいんです。だからちゃんとしなきゃいけない。人に見られていないときが一番大変です。どういうことかというと、「人が見ていないからこんなことやるの? 人が見ているとどうなの?」というのが嫌いということなんです。それに落胆していく。だったら見られていようが、見られないでいようが、関係ない。そこに存在しているのは自分だけ。「違いはない」という意識で行動するのが僕は楽なんです。

プライベートはほんの少々。1日24時間のうち、23時間55分は「郷ひろみ」なんです。たとえばどこかでサインを求められたとき、「プライベートだからゴメンね」と言う間に、写真も撮れますし、サインも書けます。周り(のスタッフ)は止めますがね。僕の気持ちとしては、「そう言っている間に書けるでしょ」って。これは10代から今日までやって学んだこと、経験ですね。10代、20代の頃はそんなことはあまり考えていなかったけど、今はそう。だから僕は表裏はないと思う。「『それが面白いか、そうでないか』はさておき」、そういう感じです。(聞き手 清水満)

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