ロシアは26日、バイデン米政権と懸案だった新戦略兵器削減条約(新START)の延長で基本合意し、軍拡競争回避への協調を演出した。ただ、人権問題などで対露批判を強めるバイデン政権に対し、対米関係の根本的修復はもはや不可能と露側はみており、さらなる対立も辞さず、自国の利益を追求する見通しだ。
「世界の対立や矛盾は拡大している。新STARTの延長は、世界が制御不可能になることを防ぐ正しい一歩だった」
プーチン露大統領は27日、オンライン会合「ダボス・アジェンダ」での演説で、バイデン米大統領との初の電話会談で確認した新STARTの延長をこう評価した。
新STARTは米露間に残る唯一の核軍縮条約。ロシアの核戦力を抑制したい米国と、国力差から米国との本格的な軍拡競争を避けたいロシアの思惑が一致し、2月5日の期限切れが迫り、延長に見通しをつけた。
ただ、延長合意は両国の接近を意味しない。ロシアは米国のミサイル防衛網を突破できるとする新兵器の開発を着々と進める。米国と並ぶ核大国の地位を保つため、軍縮には消極的だ。
米側の発表では、バイデン氏は会談で、ロシアによるサイバー攻撃▽2020年米大統領選への干渉▽露反体制派指導者ナワリヌイ氏の毒殺未遂-などの疑惑や問題を懸案として提起し、ロシアと対立するウクライナへの支持も表明したとした。だが露側は発表でいずれも触れなかった。
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プーチン政権はむしろ、自由や人権などの価値観を重視するバイデン政権が、ロシアの非民主的な行動に圧力を高めてくるシナリオを警戒してきた。そうした懸念はすでに現実となりつつある。
「(プーチン政権が)露国民の平和的なデモや表現の自由を抑圧しようとしたことは、今後さらに社会を締め付ける兆候だ」