就任から1週間を迎えたバイデン米大統領は、27日(日本時間28日未明)の菅義偉首相との電話会談を含む主要国首脳らとの一連の会談で、自由民主主義の価値観を共有する国々と連携して中国の脅威に対抗していく立場を鮮明に打ち出した。バイデン政権の対中政策は、少なくとも言葉の上ではまずまずの滑り出しを見せたが、今後は実践が伴うかが大きく問われてくる。
(ワシントン支局長 黒瀬悦成)
バイデン氏は大統領就任後の22日、従来の慣例に従いまずカナダ、メキシコの首脳と電話会談したのに続き、23日にジョンソン英首相、24日にマクロン仏大統領、25日にメルケル独首相と電話で会談した。
バイデン氏が英仏独の首脳と真っ先に会談したのは、世論操作やサイバー攻撃を駆使した「ハイブリッド戦」で欧州の弱体化を図るロシアの脅威に直面する西欧諸国に対し、トランプ前政権で停滞した米欧関係を再活性化し、欧州防衛に積極関与していく方針を明示する狙いがある。
バイデン氏は一方で、英仏独首脳と外交分野の最重要懸案の一つとして中国の問題を協議したことが明らかになっている。
バイデン氏は、中国によるハイテク覇権や知的財産の窃取、不公正な貿易慣行、南シナ海などでの軍拡路線を阻止するには欧州諸国の協力が不可欠だとして、各国首脳と連携態勢の構築を図ったのは確実だ。
菅首相との電話会談は、欧州主要国と対中国・ロシアで意思統一を図った上で、インド太平洋における最大の同盟国である日本との協議に臨んだとみることができる。
バイデン政権は、20日の大統領就任式に台湾の駐米台北経済文化代表処(在米大使館に相当)の蕭美琴(しょう・びきん)代表を正式招待した。中国新疆ウイグル自治区での少数民族に対する弾圧を「ジェノサイド(民族大虐殺)」と認定したトランプ前政権の立場を踏襲することも明言した。
23日には米海軍の原子力空母セオドア・ルーズベルトが南シナ海に展開し、艦載機の発着艦訓練などを実施した。いずれも、米国がトランプ前政権の路線を継承し、中国と「大国間競争」を展開していくとのメッセージを習近平体制に届ける意図があるのは確実だ。
ただ、サキ大統領報道官は25日、中国に「戦略的忍耐」で対応すると言及し、オバマ元政権が対北朝鮮政策で同じ立場を打ち出して失敗した過去を連想させるとして波紋を呼んだ。
民主党内部には中国との対決よりも気候変動や疫病対策、貧困撲滅といった地球規模の課題を優先すべきだと主張する勢力も根強く存在するだけに不安も少なくない。