【ワシントン=黒瀬悦成】米下院は25日、トランプ前大統領が支持勢力を扇動して連邦議会議事堂の占拠・襲撃事件を引き起こした責任を問う弾劾訴追決議(起訴状に相当)を上院に送付した。上院での弾劾裁判は2月9日に始まる予定。2024年大統領選への出馬や政界復帰への意欲を示すトランプ氏の政治的将来を左右する裁判として注目される。
歴代大統領で任期中に2度も弾劾訴追されるのはトランプ氏が初めて。退任後に弾劾裁判を受けるのも初めてとなる。
この日は、検察官役を務める下院議員らが決議を上院に届け、上院(定数100)が翌日に陪審員役を務める全上院議員の宣誓手続きを行う。
検察官役はラスキン下院議員ら9人で、いずれも民主党。裁判長は上院で最長老のリーヒー議員(民主党)が務める。トランプ氏の弁護人は、南部サウスカロライナ州の歴代共和党知事の顧問弁護士を務めたブッチ・バワーズ氏が担当することが決まっている。
裁判の開始は、新政権の閣僚・高官人事の承認や新型コロナ対策の追加経済対策などの審議を優先させることで与野党が一致したたため2月にずれ込んだ。
上院本会議での弾劾裁判で有罪とするには出席議員の3分の2の賛成が必要。上院の勢力は現在、民主、共和両党とも50議席で、共和党議員17人が賛成に回らなければトランプ氏は有罪にならない。
憲法学者などの間では、退任後の大統領を弾劾裁判で「罷免」することの妥当性に関し慎重論も出ているほか、共和党の上院議員の間でも弾劾の是非をめぐり意見が割れている。
トランプ氏の1回目の弾劾裁判でも同氏を有罪にすることに賛成したロムニー上院議員は24日、FOXニュースの番組で「(トランプ氏の)行動は弾劾に値する」と強調した。
一方、共和党議員の間では、トランプ氏を有罪にすれば同氏の支持勢力が反発して共和党から離反しかねないとの懸念も広がる。バイデン政権が国民に「和解」を呼びかける中、逆に党派間対立を先鋭化させるとの声も少なくない。
共和党のルビオ上院議員は同日、FOXニュースに「裁判はばかげている。非建設的であり、国内で燃え上がっている炎の上に大量のガソリンをかけるようなものだ」と批判した。
CNNテレビによると、バイデン氏は25日、同テレビに対し、トランプ氏を有罪にできるだけの票は集まらないだろうとの見通しを明らかにしたという。